大学編 三井

□conte 14
1ページ/2ページ


薄いグリーンのカーテンが緩やかに風にそよぎ、その向こうにはいい天気が広がっている。
そんな何ともさわやかな朝。

そしてコーヒーの良い香りが部屋に広がる……が、それとは対照的に気まずい雰囲気も部屋中に充満している。

「で、いつから?」
「1か月前……」
「いつの間に。おまえらそんなに顔合わす機会なかったろ? オレがいなきゃ」
「まあ、そうだけど、ちょっと……」

突っ込んでくる藤真に三井はたどたどしく答える。元監督はすべてを把握しないと納得がいかないらしい。

「恋人のフリしてるうちに、ほんとに恋に落ちたってやつか。単純だな」
「失礼ね。純粋と言って」

そんなタマじゃねーだろと言いたいところを飲み込んで、藤真は渡されたコーヒーを受け取った。それにしても、三井と玲がねえ──

「仙道は玲がオレの従妹って知らねーで付き合い始めたわけだけど、三井は承知の上でなんだから、それなりの覚悟があると思っていいんだよな?」
「健司! 仙道は関係ないでしょ! それに覚悟って何!?」
「んー、オレを兄のごとく慕う覚悟?」と自分で言っといて、藤真は笑いをこらえられず吹き出した。

面白がっている……。玲は反論する気をなくしたが、ここでしばらく沈黙を守っていた三井が口を開いた。

「あるぜ? 覚悟。玲を大切にするって覚悟なら」
「ひさ…三井さん……」
「へえ、三井、ずいぶん殊勝なこと言うじゃん」
「じゃなきゃ、安西先生に紹介なんてしねえ」
「何だよ、オレより先に安西先生かよ。まあ、本気度合いは認めてやるか」

何だかんだ言って、藤真も玲のことを心配していたわけで、玲もその少々婉曲した優しさを感じ、だから藤真には勝てないと思った。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ