あれから5年後
□conte 02
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5年の歳月を経ても、仙道は仙道だった。
何も変わっていないような錯覚を起こす……
が、時はまた、それぞれの現実を有無をいわさず刻んでいる。
Conte02
彦一の情報は間違っていなかった。
仙道の所属は藤真のチーム。
確かにそこのチームはケガによる離脱でフォワードに精彩を欠いていたため、何としてでも仙道が欲しかったのだろう。
「おまえとポジション争いするのかと思ったぜ」と藤真がふざけて言う。
「藤真さん相手にそんなの遠慮しますよ。向こうではパワー的にPGやるしかなかっただけで」
「コノヤロ、何でも出来るって言いてぇんだな?」
仙道は眉を下げ、曖昧な笑みを浮かべる。
変わってねえなと藤真は思った。
髪は相変わらず立てているが、以前より短くなっている。つかみどころのなさは今でも健在。NBAスターたちとともにプレイする仙道を画面越しに見ていたせいか、正体不明感が増している気がする。
それでいてこの顔じゃあ、しばらく周りがうるせーだろうなと嫌な予感までしてしまう。少なくとも、こいつの信者のあの後輩記者は今までの数倍の勢いで通ってくるだろう。
昨日は顔合わせだけで、チームに合流して練習するのは今日が初めてだったが、仙道はなんなく馴染んでしまった。
アメリカ帰りオーラを警戒していたチームメイトの方が拍子抜けしていた。それが藤真はおかしくてたまらない。
それにほんのちょっとだけだったが、スリーメンで組んだときの時の何ともいえない手ごたえ。
仙道との相性の良さを感じた。そして、これは以前にも得た感触であることを思い出す。それを今ごろまた実感するとは思わなかった。
NBAは独自のルールを持っており、コートやボールの大きさからして微妙に違う。こっちに早く慣れたいからもう少しやっていくという仙道に、藤真も付き合うことにした。
「おまえ、住むとこどうするつもり?」
「S川あたりで探そうかと。新幹線停まるし、空港も近いからどこ行くにも便利ですしね」
最近、高層マンションが乱立し、再開発始まるベイエリア。
「ふーん、あっちでは相当貰ってたんだろ? ポンと買っちゃうとか?」
「まさか、今後どうなるかわからない身でそれはないですよ」
貰ってたは否定しねーんだとぼんやり思う。
日本では考えられないが、野球やサッカー以上の年俸をもらえる選手もいるくらいなのだ。
それにどうなるかわからない?おまえが言うのか!? じゃあ、なんでこいつは日本に戻ってきたんだろうという疑問がわく。
でも、その質問には「戻ってこないかって言われたからですよ」と、聞いた自分がおかしいのか? と頭をかかえてしまうような答えが返ってくるではないか。そうだ、仙道はそういうやつだった。