あれから5年後

□conte 03
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彼はあのとき語った夢を覚えているだろうか


Conte 03

仙道が帰国して1か月ほどたつ。

日本におけるプロバスケのマイナーさを象徴するように、直後はスポーツ系の新聞、雑誌で名を目にする程度だったが、統合リーグ開幕へ向けてのバスケ界のプロモーションが始まり、あちこちで仙道を見かけるようになった。
テレビのインタビュー、各種雑誌の記事と露出が増えれば、おのずと注目が集まる。

さすれば、仙道ゆえに、女性がほうっておくわけがない。そこに企業が目をつける。各種取材、広告の依頼が殺到した。


その少し前、当たり前のように、玲にも仙道のインタビューの依頼が入った。
今まで仕事を断ったことなどない。だが初めて遠慮したいと思った。

週明け一番の仕事。仙道は自分が現れたら驚くだろうか。5年ぶりに会うことになる。

仙道のアメリカでの努力を、そして今後の展望を取材するのが役割なら、それが自分で良かったと考えるべきだ。必ず自分なりのいいものにしようと、玲は心の中でそっと誓った。


なので、仙道に関する他記事の切り抜きやプリントアウトしたものが、机の上に山積みになっていた。

「へえー、次は『仙道 彰』?」
奥田がそれを見て言った。
「え? ああ、そうなんだよね……」
「そりゃ、適任だよなあ。玲は藤真くんの従妹だし」
「それ関係ないよ……」

それ以上突っ込まないで欲しい。会ったことある? なんて聞かれたらどうしようと焦る玲に、それ以上に驚くことを奥田は言い出した。

「こっちもさ、今度、彼を起用することになったんだ」
「え……CM?」
「そう。現場で動くのは2つ下のやつだけど」

まさか仙道と奥田に仕事とはいえ関わりができるとは思わなかった。
でも顔を合わせるとは限らない。彼はプランニングするだけかもしれない。あまり考えないようにすることにした。
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