あれから5年後
□conte 04
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久しぶりと言っていいのか……少し迷う
Conte 04
練習前に一本インタビューが入ってるから、とは言われていた。チームの広報担当マネージャーが迎えにくる。
今朝は出かけないと損をするようないい天気。でもいつも自分たちの居所は体育館の中であり、それはもう何年も続いてきたこと。その点、日本でもアメリカでも変わんねえなと仙道はぼんやり車外に目をやった。
「さ、今日のインタビュアーは美人だぞ?」
「知ってるんですか?」
「そりゃあな。藤真の従妹さんだから」
「それって…玲……芹沢さん?」
なんだ、知ってんのかとマネージャーは面白くなさそうだ。
藤真から玲がライターもしていることは聞いていた。一瞬驚いたが、そうかと不思議な納得感を得る。
「5年ぶり……か」
そう仙道はつぶやいた。
連れてこられた場所は恵〇寿のウェスティンホテルのラウンジ。マネージャーは少し見渡してから、奥のソファーに座るひとりの女性のところへ向かう。
自分の中の玲は少しウェーブがかかった長い髪をしていた。だかマネージャーと挨拶をかわす女性の後ろ姿は肩ぐらいのストレート。その髪が揺れて振り向いた。
玲だった―――
「おはようございます……久しぶりだね、仙道くん」
「ああ、おはよ……」
『仙道くん』なんて初めて呼ばれた。
いや、最初はそうだったかもしれないが、記憶にある玲は『仙道』か『彰』だった。
「あまり驚かないんだね?」
「さっき……車の中で聞いたから」
いや、わかっていても、目の前にしたら驚いている。もともと顔に出ない性分のおかげで助かったと自分自身ホッとしているくらい。
そっか、と玲は笑った。
「今日は仕事なので、さっそくですが始めさせていただいていいですか?」
仕事か……。それに自分もかなりタイトなスケジュールなので、余計な話をしているヒマはない。30分の取材時間だった。
やはりまず、アメリカでの仙道のことから。今までもこの手の取材は何度も受けてきた。なのである程度慣れてきており、相手の様子を探る余裕もあった。
玲は自分の話を丁寧に聞き、的確に質問してきた。それも、事前に用意してきたものだけではなく、自分の話からきちんと拾ってくる。そして、今なら突っ込めるというタイミングを虎視眈々と見計らっている。その姿勢が玲らしいな、と仙道は心の中でクックと笑った。
5年ぶりの彼女は、自分の記憶の中の彼女とは違っていて少し焦ったが、根本は変わってないな、となぜか安堵する自分を……どこか遠くで感じた。