あれから5年後

□conte 07
1ページ/2ページ


あのとき思い描いた未来が実現した今、その先は……


Conte07

今回のインタビューは練習後にチームのクラブハウスで行うことになっていた。

「ちょっとはその面白くてたまんないって顔、隠してよ」

わかってはいたけれどやりにくい……。玲は藤真を牽制する。そして仕事だからと「藤真さん」と呼んだら、お腹を抱えて笑われた。勘弁して欲しい。

しかもなぜか彦一までいるではないか。何やらものすごい頻度で取材しにくるそうで、今日はこの後に玲が来ると聞きつけ、彼のチェックが入った次第。しゃべったのは藤真以外ありえない。
彦一が、仙道と自分を交互に見る視線を感じる。まったくわかりやすいんだから……と小さく溜息をついた。

相手が仙道と藤真だということを意識しないよう最大限努力をしながら進めていく。突っ込みすぎない程度に掘り下げる。始まると、思ったより藤真は協力的だった。

バスケ三昧だったという学生時代の話に、藤真が「それ以外になんかねーのかよ」と聞いてくれた。思春期まっただ中だろ? という余計なセリフ付きだったけれど。そして仙道もそつなく「釣りが趣味でしたね」と答えた。

藤真はそういう人だったな、と久しぶりに自分の従兄を振り返る。そして仙道の答えに、知ってる……と心の中で呟いた。


話題は最近のことにうつった。

もしバスケプレイヤーでなかったら何をしていると思いますか? バスケ以外でハマってることは? 行ってみたい場所、やってみたいことはありますか―――?
いつも屋内ばかりだから、アウトドアなことやりてーなと藤真は言う。

「牧にサーフィン教わるってどう? オレら湘南方面に住んでたんだし」

藤真がサーフィン……皆がブッと吹き出した。まったくイメージと合わない。合わなさすぎる。しかし、「あ、それで思い出しました」と今度は仙道が口を開いた。

「行きたい場所なら……ありますよ? 高校のころによく行った防波堤に、久々に行ってみたいなーと」
「釣りをされたという……?」
「そ、海眺めながらぼんやり考え事したり出来る大切な場所だったんですよ。あと夢を語り合ったりね」

ペンを走らせていた玲の手が止まった。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ