あれから5年後
□conte 12
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試合に勝った瞬間、いつも同じことを思う。
Conte 12
目覚めると、おぼろげながらもすぐに自分の部屋でないことに玲は気付いた。
「ったぁ……」
この頭の重さと気分の悪さは、間違いなく二日酔い。そして、そんな痛む頭でもここがどこかはすぐに認識した。奥田のマンションだ。
だが、ベッドには自分ひとり。もう起きたのだろうかとのろのろと立ち上がると、その彼がソファーに身を縮めて寝ている姿が目に入った。3人掛けサイズのソファーだが、彼もかなり身長があるので寝づらそうだ。
近づいて、掛けているもののズレを直すとともにそっと顔を覗き込むと、その寝顔に何ともいえない優しい気持ちになる。だけど、だからこそ、少しばかりのたまらない憂鬱も胸をつく。
昨夜のこと―――
自分と奥田の向かいに座る仙道の視線。仕事でもないのに芹沢さんと呼ぶ仙道の声。そんなことばかりが記憶にある。
いつもはこんなに酔わない。きっとこれは精神的なもの。いつからこんなに弱くなったんだろう。昔の自分が今の自分を見たらきっとがっかりして軽蔑するかもしれない。
暗い中で考えていると気がめいることばかりに思いがいきつく。
玲は窓際によってカーテンを細く開けた。その隙間から淡い光がにじむように広がっていく。それがソファーまで届いてないか確認した。平日はろくに睡眠を確保できない彼をもう少し寝かせてあげたい。
大丈夫―――
今は目の前の彼を見ていればいい。心が揺れるなら、真っ直ぐ立っていればいい。
きっと自然と答えは出る。