あれから5年後
□conte 15
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記憶の中でふたりの想いが一致した瞬間
あの時からきっと。
Conte 15
人波に師走の色が濃い季節。慌ただしさに輪をかけるように暮れが押しせまる。この1年、特にここ数ヶ月あまりはめまぐるしい日々だった。
あの日以降は地方での試合が続いたため、仙道に会っていない。連絡もとっていない。試合結果だけをチェックしていた。
「玲、年末年始の予定は?」奥田が聞いた。
「30日に高校の友達と集まるから、そのまま実家で年越ししようかと」
「高校の友達……? テニス部の?」
「そう、いつものメンバー」
「それって女の子だけ?」
思わず詮索するようなことを聞いてしまう。いつもはそんなこと言わないから、玲に不思議そうな顔をされた。
「いや、せっかくの休みに俺のことは? って思ってさ」
「やだ、ヤキモチ? 初めて焼いてもらったかも」
ふふっと玲はおかしそうに笑う。
「ね、こっちに来ない? 鎌倉に初詣行くのどう? 混んでるけど」
奥田も笑みを返すが、ヤキモチじゃなくて自分は不安なんだと感じていた。
あの日偶然に知ってしまってから、何度玲に聞いてみたいと思ったことか。話してくれないかと、わざと仙道の話を振ったこともある。何も変わらなかった。
心の中にぬぐいきれぬ影がジワジワと広がっていく―――