あれから5年後
□conte 22
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その時が来なければいいと思っていた
でももう避けられない
Conte 22
翌朝、練習場に着くなり仙道は藤真に捕まった。
「昨日、見てたぜ? 玲を拉致してっただろ?」
まったくこの人は油断がならない。ロッカールームの窓から丸見えだったぞ、と誇らしげなくらいだ。
「覗かないでくださいよ」
「あんなとこでやってっからワリーんだ。で?」
「は?」
「ちゃんと送ってったんだろーな」
「もちろん、ほぼ真っ直ぐ送り届けましたよ」
藤真は胡散臭そうに仙道を見上げるが、その表情からは読み取れない。だが意外と晴れやかな顔をしている。藤真は「で?」とまた聞いた。
「取り戻す決心でもしたのか?」
「……すごいな、藤真さん。半分あたってる」
玲が幸せならとか、玲が望まないことはしたくないなんてキレイごとを並べていたが、その玲が自分と同じ気持ちなら。
そして決心をしたのは玲もだと思う。ただ彼女には曖昧に出来ないことがある。そしてそこには自分は入り込めない。それこそそれは彼女が望まないだろう。
(待つしかねえのかな)
「玲次第ですよ」
「まだそんなのんきなこと言ってんのかよ。そんな分かりきったような顔して、それ、分かってるフリだろ?」
どこかで聞いたことあるセリフに仙道はクックと笑った。
「ハハ、越野と同じこと言うんですね」
「こしの? 誰?」
「陵南の6番」
ボウズと真ん中分けどっち?と聞かれ、苦笑しながら真ん中と答える。
「越野に藤真さんと似てるって言ったら喜んでましたよ」
「お、いいヤツだな」