あれから5年後

□conte 27
1ページ/2ページ


いつも突然で
いつも驚かされる


Conte 27


プレーオフ・ファイナルは有〇コロシアムで。

チームが決勝進出を決めた翌日に、叔母から藤真がチケットを用意したからと声かけられた。健司から見に来いなんてどうしたのかしらねえ? いつもは嫌そうな顔するのにと首をかしげながらも、優勝がかかっているこの一戦、どちらにしても観戦予定だったらしい。
姉も安定期に入り、今のうちにと外出したがっていたので誘った。

アップに入ったときに藤真がこっちを見てニヤッとし、仙道がぺこりとおじぎをした。
姉が耳元で「生で見るとまたずいぶんとカッコよくなったわね〜」と言ってきたので、曖昧な返事をかえしておいた。


試合の途中からは緊張しすぎて記憶がない。もちろん仙道に勝ってほしいから。そして、何となく……この試合の明暗を自分に重ねているところがあった。優勝したら――

「玲、顔怖いよ? ちょっと思い詰めすぎ」
「だって……」
「だって、何? 優勝したらとか考えてんじゃないの? もし負けたらどうすんの」
「負けないよ、彰は」
「あら、そうですか」



試合終了のブザーが鳴り響いた時、仙道は右拳を高々と突き上げた。涙でそれが霞む。
振り向いた仙道がこちらを見たが、チームメイトに飛びつかれて視線が合ったのはほんの一瞬。それでもお互いの意思は通じたと思った。

ひとしきりの歓喜の渦がおさまったころ、皆の輪から抜けようとする仙道を藤真が取り抑えた。

「ちょっと待て」
「?」
「玲のとこだろ? でも今はよせ」

仙道の前科は彦一から聞いたことがある。IH出場を決めた試合後に、ギャラリーの玲の元へ乗り込んだ仙道のことを。

「あいつも仕事がら顔知られてるし、スキャンダル扱いで追っかけまわされるぞ? せっかくのこれからのオフを潰したいのか? あとでオレがひと肌脱いでやるから」
「それ、何だか高くつきそうですね」

自分にまでとばっちりが来ることを懸念して、藤真は先手を打ったわけだが、その藤真の言うことももっともだと、仙道はそのまま大人しくインタビューに応じた。もちろん、彦一の取材もしっかりうける。


「じゃ、最後に仙道さん、オフは何したいですか?」
「んー、何も考えずゆっくりしたいなあ」

(相変わらずや……次、藤真さんいこ)


「彦一、真面目に答えるから、あとでちょっと頼まれてくれねえ?」

(……今まで真面目に答えてへんってことか……)
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ