あれから5年後
□conte 30
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Le dernier conte(最終話)
意識を飛ばしてしまっていたらしい。気付くとうつ伏せに倒れるように眠っていた。夕暮れだったはずが、何時なんだろう―――
体を起こそうとすると、仙道の腕が絡まっていた。そう……抱いたあとそうして寝るのは彼のクセだった。ふふっと笑みがこぼれる。
仙道も気が付いたようだ。
「……何時?」
「9時ちょっと前」
昼も遅かったしルームサービスで軽く済ますことにする。玲もシャワーを浴びて出てくると、もうテーブルに整えられていた。
仙道がワインの栓を開けて注ぎ、そのグラスを玲に手渡した。よく冷やされた白ワイン。その冷たさが喉をしみるように通過する。
「なんか、デカダンスな風情だな」
「それどういう意味?」
「不健全で世に反してるって感じ。ほぼ裸でワイングラス片手にチーズに生ハム……これがベッドの上だったらフランス映画の世界だぜ?」
玲はバスタオル一枚。濡れた髪をかきあげる仕草が艶っぽく仙道の目にはうつる。
「パリジェンヌのお友達でもいたの?」
仙道はニコッと笑った。
「いや、オレが欲しいのは玲だけ」
「答えになってない……」
グラスを取り上げられ、ソファーに押し倒された。
「言っただろ? あっちでもずっとバスケ一筋だったって」
「そうだね、そのために行ったんだし」
「今では玲と離れていられたことが不思議なくらいだよ」
また胸元に顔をうずめられ息があがってくる。重ねあう唇からはワインの芳醇な香りがし、それは脳を刺激する。差し込まれる舌はひんやりして気持ちいい。あっけなくバスタオルは外され、もう仙道しか感じられない。
その後もふたりは互いをベッドに沈めあった―――