続・5年後
□Fruits de mer
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「藤真さん、ご家族によろしく言っといてくださいね」
「将来、義理の甥になるってか?」
「ハハ、さすがに気が早いですよ……あれ、玲?」
ソファーに力尽きて倒れるように玲は突っ伏して寝てしまっていた。その姿に仙道は心がほのかに温まり、微笑みが浮かぶ。
確かにこの3,4日はゆっくりするのとはうらはらに、めまぐるしい勢いで過ぎていったと思う。
ずっと求めていたものを手にした。
満たされる幸福感を知った。
でもそれは尽きることなく、さらにもっとと願う自分は、自分でも想像できなかった本性を見せられた気がする。
「大方、おまえが寝かさなかったんだろ?」
仙道の口元がほころんだ。
「ちっ、幸せそうな顔しやがって。じゃ、オレ帰るから、玲よろしくな。あと片づけも」
体よく逃げられたと仙道は思ったが、玲に触れたくなってきていたのでちょうどいいかと考え直す。
テーブルのものをシンクに運んでから、玲のところへ戻りしばらく頭を撫でていたが、起きそうもないのでそっと抱き上げた。ベッドに下ろすと微かに気づいたようだが、また寝てしまった。
隣に横になり、玲のしていたエプロンを後ろからはずしてやる。よく裸エプロンなどと言うが、そんな意図的にしたコスプレよりも、さっきまで本来の目的のもとに機能していたそれを自分の手で脱がせていく……コレもそそるな、などとこっそり笑みをうかべた。
首元に顔を寄せると、玲の匂いがする。今夜はそのまま帰ろうしていた心積もりが揺らいでくる。
葛藤と戦いながら玲を抱きしめていると、自分にも抗いがたい睡魔が襲ってきた。この欲求には素直に従おうと、そのまま仙道は目を閉じた。