続・5年後

□Une robe du soir 1
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ホテルのロビーで玲と落ち合ったとき、仙道はホッと胸をなでおろした。
ドレスの胸元の開きは控え目で、スリットはそれなりに入っているが、丈も短すぎることはない。

玲の属する雑誌の企画パーティ。

編集部からぜひ今をときめくバスケ界の貴公子ふたりを誘ってくれと、親戚コネを頼られた。しばらくして現れた藤真も今日はフォーマル。
へえ〜と玲は下から上まで眺め、口を開かないでいてくれるならそのプリンス扱いも
認めてもいいと思った。

会場となる階に案内し、クロークに玲は着ていたジャケットを預けた。そして振り向いた玲を仙道は慌てて制した。

「ちょ、ちょっと待て。それ……」
「?」
「背中……開き過ぎじゃねえ?」

胸元や足に気をとられていたが、玲のドレスは背中が大胆にカットされているものだった。肩から腰にかけての揺れるドレープがさらにそれを強調している。

「エロいな。ノーブラか?」藤真もしげしげと見下ろす。
「それ用のしてるってば! これ着てくださいって用意されてたんだからしょうがないでしょ!」

胸の谷間が見えるのと、背中が全面オープンなのと、どっちがいいか……どっちもなあとブツブツ言う仙道を置いて、玲は藤真を促して会場に入っていった。

最近よくこういう場に引っ張り出される。回数を重ねるにつけ、自分は何を求められていて、どう振る舞えばいいか仙道はだんだんわかってきた。今日も適当に……と思っていた。


玲は藤真と仙道を上の人に紹介したり、知り合いに挨拶したりで忙しい。その間、仙道は極力、玲の後ろに立つ。仙道のガタイは容易に彼女の背中を隠した。

だがそうやって近くにいると、玲が体を動かすたびに、わずかであったが控え目につけられた香水が鼻に届いた。時々玲がつけるものだ。

よく知っている香りだが、背中から匂い立つように感じ、そこに唇よせる瞬間がよみがえってくる。
司会者や前方で挨拶する人々の話などほとんど聞いてはいなかった。
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