続・5年後

□Le petit bebe
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ふたりのオフが重なったとある平日。手土産にするべくケーキを買いに、こ洒落た店構えのパティスリーに寄らされた。
オレも入るのか?と思う間もなく、玲は早くしてと言わんばかりにドアを開けて待っている。

足を踏み入れたとたんに甘い匂いが。けっして甘いものが嫌いなわけではないが、仙道はそれだけでご馳走さまと言いたい気持ちになった。

「ここ、エシレバターを使ってて、タルトが最高なんだよ? 一番好き」

へえ、と答えるがよくわからない。

「お姉ちゃんはこのフランボワーズのが好きなんだけど、彰はどれがいい?」
「何でもいいよ」
「そういうと思った」

なら聞くなよと思わなくもないが、嬉しそうにショーケースを見入る玲にまあいいかと一歩下がったところで見守った。自分のはもう決まっているらしく、でもまだ何か悩んでいる。

「ねえ、お義兄さんにはやっぱ見た目重視でフルーツタルトかなぁ」
「いいんじゃねえ?」
「適当な返事だなぁ」

そう言いながら、玲は店員にこれとあれとと指差し始めた。それを横で聞きながら、仙道はあれ?と思った。

「オレってさ……これ?」
「チーズタルト。一番プレーンで定番だから」
「オレも他のみたいにフルーツのってるのがいいなー」
「何でもいいって言ったじゃん……」

店員さんもクスクス笑っている。

「すみません、フルーツタルトを2つにしてください……」
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