続・5年後
□Reunion 2
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「ねー、仙道、もう結婚しちゃえば?」
玲が席をはずしている隙を見て発された小夜子の言葉に、藤真がブーっと吹き出しそうになった。
「おいおい、こいつと親戚になっちまうよ」
「藤真さん、仙道とは長い付き合いになりそうですね」
「しかも今までよりはるかに濃い関係だな……」
どこかでまあそうなってもおかしくねえと思っているふしはあるが── 藤真は無音の溜息をついた。
嫌そうですね、なんて仙道が言ってくるから睨みつけてやった。
「スポーツ選手ってわりと結婚早かったりするじゃない?」
「でもこいつ、元来マイペースの気まぐれヤローだからまたのんびり構えてんじゃねーの? ケツに火がつかなきゃ動かねえとこあるだろ。ま、かと思えばものすごいカウンターしかけて飄々としてるようなとこもあったけどな」
「越野……オレってどんなヤツだよ? めちゃくちゃだろそれ」
「そーいうヤツでしょ。だから玲しかいないって言ってんの」
なるほどと全員をうなずかせる一言。越野は口にいれようとしていた箸を持つ手を一瞬止め、うんうんと頷きながらパクッと食べた。
仙道自身、疑問が氷解したかのような納得感を得た。自分は玲といると自然でいられる。玲の側で一番楽に呼吸できる。
今気付いたような顔をしている仙道に、藤真は呆れたという風に肩をすぼめた。のらりくらりとかわしやがって。
だが、急に手の平返したように唐突に行動に出るときがある。まさに越野が言い表したばかりのこと。
「なあ、だからって速攻でくるんじゃねーぞ?」
藤真がたしなめるように言った。
「ほら、この間、ねーちゃんとこの赤ちゃん見に行って、おまえにしちゃ珍しく影響受けてただろ」
「は?」
「順番間違うなってこと」
「ああ、そういう意味ですか、ハハ」
「でもひとつのきっかけとしてそのくらいないと、仙道だめかも」
だからオレってどういう……と思えど、自分が何かを決断するきっかけはバスケか玲。それがあれば他はどうでもいいと言うと言い過ぎかもしれないが、わりと本音だったりする。
その行き着く先が『結婚』ってやつなのかもしれない。初めて意識したその2文字だが、思いのほかしっくりきていた。