続・5年後

□Thermalisme 2
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お料理も品数多く、とても美味しかった。目の前の漁港で水揚げされたお刺身はもちろん、一番印象に残っているのは『カサゴの唐揚げ』
丸ごと揚げられており、骨までたべることができる。見た目のグロテスクさに反して上品な味を堪能した。

でも仙道は違うことを考えていたらしい。おもりの重さが大事なんだよな、とか、海底からえさが離れないような仕掛けが……と自分の世界に入り込んでいた。海の近くに来たら、仙道の思考がそっちに飛んでしまうのは仕方がない。

デザートをテラスに面した広縁でいただく。
「終わりましたので、ごゆっくり。何かあればお電話ください」と声をかけられ、障子を開けると布団が二組敷いてあった。

「なんでこういうのってヤらしいイメージなんだろうな」
「そう見えるその目がいやらしいの!」


せっかくだからお腹が落ち着いた頃合いを見計らって、大浴場にもいってみる。誰にも気兼ねの必要ない部屋の露天もいいが、大きいお風呂もいいものだ。しかも結局玲が入っている間、ひとり貸切状態だった。
女性用ののれんを分けでると、仙道が涼んで待っていた。

「彰も貸切だった?」
「ああ、遠慮なく手足を伸ばさせてもらったよ」

さあ、行こうかと立ち上がると、ちょうどこれから大浴場に入ろうとする人と行きちがった。

「あら、昼間のきれいなお嬢さん」

庭ですれちがったご夫婦だった。

「まあ、ご主人、背がお高いのね?」

そう笑いかけられ、仙道もハハっと笑みを返し、通りすぎてから昼間って?と聞いてきた。

「彰がひとりで楽しんでる間に、庭でお会いしたの」
「そのあとふたりで満喫しただろ?」


部屋に戻ってビールのグラスを傾けながら「ご主人だって。悪くねーな」と仙道は満足げだ。

「じゃ、玲は奥さま?」

「勘違いを否定しないなら、そーなるのかもね」と玲は荷物を整理しながら淡々と答えた。
背後では仙道はなおも、奥さまってことは人妻? 人妻と温泉って卑猥な組み合わせだなぁとか何とか呟いている。ふと気づくとそのブツブツと唱えるような声がすぐ後ろで聞こえた。

「ね、玲ちゃん?」
「な……に?」

そんな風に呼ばれて、嫌な予感がする
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