続・5年後

□Thermalisme 2
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「人妻ごっこなんてしないよ?」
「アハハ、玲のほうがヤらしいだろ、それ」
「だって…玲ちゃんなんて言うから……」

浴衣で充分……そう独り言のように口にして手を伸ばそうとしたら、玲があっと立ち上がった。「あぶない、見逃すところだった」とテレビをつけた。

「録画予約し忘れちゃったの。5分程度のインタビューだから見ちゃっていい?」

仕事関係か。それに5分なら待ちましょう、と仙道は空振った腕を後ろ手につき、そんな玲を眺めていた。来週自分が対談することになっているんだというその相手を、膝を折って座り、前のめりに食い入るように見つめている。


自分のことなんて瞬時に忘れられたような気分に仙道はなった。しかも注がれる視線の先には別の男。
5分間はおとなしく待とう。でもそれが過ぎたら、今、誰と一緒にいるのか玲に思い知らせる。


浴衣の前が乱され、のぞいた膝の間を仙道の膝が割ってはいった。彼女の両手を頭の上でまとめると、反対の手で胸元をより開く。思わず「イヤッ……」と玲から声が漏れ、それがまた自身をいたく刺激する。腰紐を解き、その両手首を軽く拘束すると、玲は驚いた様子で見上げてきた。

「こっちで目隠しもしよーか?」

玲のえんじの紐を緩めながらそう言うと、慌ててブンブンと首を振ってきた。ま、確かにそこまでする趣味は自分にはない。

「ちょっと、彰……」

はずしてと乞われる前にその口を塞いだ。そのまま玲の肌に吸い付くと、少しづつ唇を下におろしていく。
自由にならない両腕の間で、したたるほどに潤った目で見上げてくる玲。本気になって抵抗すれば、その結び目が簡単にほぐれることをきっと彼女はわかっている。だがこうしてそれに甘んじていてくれることに玲の想いを感じる。
愛してると言われるよりも──


抱きおこすと、そのまま玲の両手を自分の頭を通して首にまわさせた。まだ息が整わないまま……玲からもキスをせがまれる。舌を体を絡ませてくる。
前もはだけ、露わになる肩や腕に浴衣が中途半端にひっかかって、それは裸よりもいかがわしい。

淫らな玲のさまに、ゾクゾクと煽られ、もっていかれたのは自分の想い。

思い知らされたのはオレの方か──?


「…何で…今笑った……の?」
「いや…してやられたなと思ってさ……」

何のことかわからないまま、仙道に抱きしめられ、玲はより高みに連れていかれた。





だんだんと光の領域が増し、闇が後退していく。少しづつ水平線にラインが浮かび上がり、初島が明るんで見えてきた。

無理矢理だったが起こして良かったと思う。朝日が皓皓たる波の彼方に昇るさまを、こうして一緒に眺めることができた。
仙道の肩に頭をちょこんと乗せると、仙道は優しく撫でてくれた。いつまでもこうしてふたり、寄り添っていられたらと玲はそっと願った。
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