続・5年後

□Imprevu 2
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開会式後に彦一の取材を受けていると、玲も控室にやってきた。

「玲さんもインタビューですか?」
「まあ、ネタ集め?」
「何のですか?」
「筋肉」

今回のイベントに伴い各競技のアスリートを取り上げることになったのだが、その注目ポイントが『男の筋肉』 女性誌の企画だ。ここに来る前にはサッカーと体操の選手に会ってきた。

藤真に頼んで、2メートル超の代表チーム1の高さをもつセンターを紹介してもらう。
「オレ!? 藤真や仙道じゃなくて?」
当人は驚きを隠せない。だが玲はお構いなしに「身長と筋肉の相対性を」とか何とか言って先を続けた。

「強くて長持ちする筋肉……なるほど。バスケは瞬発力はもちろん、持久力も必要ですからね」

彦一も玲と一緒になって熱心にいつものノートにメモを取っている。そして藤真はもちろん、他のメンバーも面白がって参加してくるから迷惑だ。
主に質問するのは玲だが、だんだんと話の主導権を藤真が握り始めると、どんどんおかしな方向に流れていく。

「あちこちまわってきたんだろ? どの選手が一番すごかった?」
「部位的には体操選手の丸太のような腕かな。水泳の方なんてバランスよくて、滑らかな筋肉してたよ。やっぱり水で鍛えられた大胸筋がすごくって」
「なに、おまえ見せてもらったの?」とニヤニヤと藤真が言った。

「練習中にお邪魔したから……いやでも見えるでしょ」
「触った?」
「………」
「バスケの筋肉も触るか?」とふざけてセンターの選手のTシャツをまくろうとしたが、
「ま、よく知ってっか」とチラッと仙道を見やった。

「健司はどうなのよ」
「見る? 最近、ウェイトトレーニングに力入れてんだよな」
「今はいい。今度カメラマン連れてくるから、きわどい写真撮らせて」

それ、売れるやろなぁと彦一が羨ましそうに感嘆の溜息をもらした。
臍下10センチくらいまでご開帳したらどうだとか、いっそベッドの上でセミヌードはどうよとか盛り上がり出したところで、仙道が「オレらでおわり?」と玲にだけ聞こえるように聞いてきた。

今回のイベントのトップバッターでこのあとテニスの試合が行われることになっている。それを観戦する予定だった。

「いい席を用意してもらえたし、見て帰るね」
「誰に?」
「試合する当人に。あ、練習も見たいから行かなくちゃ」
「オレも行っていい? ちょっとだけ。雰囲気感じてテンションあげたいし」

そんなこと必要とする人だっけ?と思いつつも、皆に挨拶して去ろうとすると、仙道は藤真にひと言ことわって自分と一緒に来た。

「オレらも練習あんだから、時間にちゃんと戻ってこいよ?」という藤真の顔は何だか意味ありげに愉快そうだった。
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