続・5年後

□Imprevu 3
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藤真率いる日本代表VSフィリピン代表戦。

姉と観戦予定だった。赤ちゃんは母にみていてもらうつもりだったのに、ママの不在を察知したかのようなタイミングで早朝から発熱。玲の隣は空席となった。

双方の代表選手がコートに現れた。チラッとこちらを見た仙道があれ?という顔をするので、ごめんと目配せするように笑うと、何となくわかったようだ。気にすんなというように、小さく頭を振ってくれたのがわかった。


対するフィリピン代表は、平均身長こそ日本より数センチ下回っているらしいが、当たりが強そうだ。
そして、ここはアウェイの地だというのに、フィリピンサポーターのこの盛り上がり。国内で人気のスポーツだと聞くだけある。


そんな目でスタンド側を見ていると、キョロキョロしながら歩いてくるひとりの男性と目があった。
正確には彼はサングラスをしていたので、目があったような気がしただけだが、こちらに近づいてくるところをみると、知り合いかだろうか。人を探しているような素振りだったのだが。

「玲さん」とグラスをとったその人はケントだった。


「びっくりした。バスケ、見にきたんですか?」
「まあ、そんな感じです。ホントは席、向こうみたいなんだけど……玲さん、ひとりですか?」
「そうなの。一緒に来る予定の人が急遽来れなくなっちゃって」
「じゃ、そこ、座っちゃっていいですか?」

目元は隠されていて見えないが、薄めの唇が明るくニッと微笑み、彼は玲の隣に座った。

「僕もちょっと見てみようと思ったんです。参考にもなるかなっと。バスケのルールはぼんやりとしか知らないので、教えてください」


そして試合も開始される。彼はしばらく黙ってジッとコート上の選手たちの動きを見つめ、「バスケは激しいなあ」と感想をもらす。

「フットワークには共通点多いですね。あとシュート? ジャンプの最高到達点までタメを作りますよね? テニスのショットと同じかもな。打つポイントまで……」

玲も試合を見ながらテニスと比較しあれこれ話していた。藤真と仙道がいるから見にくる姉や、バスケバカの越野たちと見るのとまたひと味違っておもしろい。彼と観戦するのは楽しかった。
それでも玲の目が仙道を追っていること、彼が決めるとひときわ嬉しそうな様子をケントは感じていた。


「あの7番の彼、このあいだ一緒に練習見にきてくれてましたよね?」
「ああ、そうでしたね」
「彼で身長、どのくらいですか?」
「192pですって」

即答でずいぶん正確に答えるんだなと思う。

「で、あっちの4番の彼は従兄弟だって聞きましたけど?」
「そうなんですよ。従兄弟は…何センチだろ、180……ちょっと?かな」
「……なるほど…ね」
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