続・5年後

□Imprevu 3
2ページ/2ページ


フィリピン4点リードでハーフタイム。やはり武術が国技の国だけあって体幹が鍛えられている。

「なあ、向こうの10番……」と給水しながら仙道に話していると、仙道の視線がふと止まり、わずかに眉が寄せられたことに藤真は気付いた。
自分もチラッと目をやると、玲とキャップを被った男が親し気に話している様子が見てとれる。

仙道はこのくらいのことに気を散らすようなヤツではない。むしろ何でもないような顔してさらっとヤらかしてくれるだろうなという、わけのわからない期待のが大きい。
今ならその矛先は試合に向いているだろう。玲、でかした!と言ってもいいかもしれねーなと藤真はニヤっと笑う。
藤真と目があった仙道も、意味ありげな笑みを見せた。

「ったく、エンジンかかんの遅せーんだよ。牧じゃねえんだから」


第3Qは仙道が派手な活躍を見せ、その後も終始日本のリード。終わってみれば72対63。危なげなく日本が勝った。



試合後の余韻の続く中、「玲さん、このあと時間ありますか?」と聞かれた。

「えっと……」

その時、周囲がいっそうざわめきたったことに何事かと顔をあげると、仙道がこっちに向かってくるではないか。こんな人目もマスコミも溢れる場で──

けれど仙道より一足早く、玲の前に立ちはだかった人物がいた。ふいに視界に日本代表の4番のユニフォームが広がった。

「おー、玲、来てくれたのかー。よしよし」

わしゃわしゃと玲の髪をかき混ぜ、周りの注目を自分に向けさせるのは藤真。そして後から来たかっこうになった仙道を睨み上げた。

(バカヤロ、こんな大観衆の前で何ヤらかすつもりだ?……こっちまで期待してねえ)

「ちょっと何すんのっ」
「じゃ、おまえ、終わるの待ってろ。ほら、反省会だ、いくぞ」

促された仙道はハッハと闊達に笑い、「また、後でな」とだけ言い残して戻っていった。何なんだか……



けれど、終わってから仙道が電話しても、玲につながらない。むなしく留守電が流れる。どうしようか思案していると、牧がやってきた。

「おめでとうでお疲れさまなんだが……」と労いの言葉のあとに続いたのは、玲のことだった。
次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ