続・5年後

□Imprevu 6
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仙道とその恋人の噂は、今に始まったことではない。少し前からネット上では目撃情報が後をたたなかった。しかしどれも決め手に欠け、正式に報道されることはなかった。

が、今回、某スポーツ新聞にスッパ抜かれた。いつ撮られたのかもわからない写真付きで。

他のマスコミも動き始め、あっという間に他誌やTVの芸能ニュースで取り上げられる。
高校時代からふたりは公認だったこと。これは憶測で言われたことが美談となり、間違ったまま独り歩きしてしまったのだが、仙道がアメリカに行ってからも、遠距離で愛を育んでいたと── そして玲が仙道をインタビューした際に語った内容。


もちろん藤真の名も紙面を踊る。練習場の前には取材陣が待ち受けており、藤真は囲まれた。

「藤真さんが取り持ったんですか?」
「オレは何も。後から知りました、ってそれ何年前の話ですかって感じですよ」

あれからずいぶんたったような、ほんのちょっと前のことのような。
こういうことになるのは覚悟してたが、しばらく続くのかと思うとやっぱ面倒くせえと声に出そうだった。



チーム事務所はもともと、身を持ち崩さないならば本人に任せるという方針だったため仙道もあっさり認めた。
多くを語らないが、ひとつだけ。アメリカに行ってた5年は一度も会っていない。付き合いを再開したのは最近だ、とポツリと訂正した。


のんびりした足取りで、仙道は正面から練習場に現れた。隠すことや後ろめたいことはないと言わんばかりに。
カメラやマイクを向けられるが、驚くでも嫌な顔をするでもなく、そしてはっきりとよせられた質問には、さして構えた様子もなく淡々と答えた。

──どちらからお付き合いしようと?
「高校のときも、少し前も、オレからですね」
──アメリカに行かれてる間は会わなかったというのは、別れてたってことですか?
「行く前に」
──それはなぜ?
「お互いそれがいいと考えたからです」
──ご結婚のご予定は?
「いや、特に。おっと、遅刻するとマズいんでいいですか?」
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