続・5年後

□Imprevu 6
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ロッカールームでは周囲から憐れむような、それでいて面白がっている眼差しを遠慮なく浴びせられる。藤真と目が合った。

「笑ってごまかすか?」
「いえ、ごまかしようがないですよ。煩わせてますよね? すみません」

素直に謝られると気が引ける。

「いや、同じこと聞かれんのが飽き飽きするだけ。認めてんだから、すぐ収まるだろ。おまえこそ適当にやり過ごせよ?」

オレはいいんですけど、と仙道は苦笑いした。



玲も対応に追われていた。
どうしてこうなったんだろう。あの写真は何なんだ。関係者の話ではって、関係者って誰?

仕事先では待ち伏せされ質問攻めだし、取材先や雑誌の関係者にも渦中の人だねと好奇の目を向けられるありさま。藤真が面倒くさがっていた通りになったと溜息をつく。
その藤真はお怒りではないだろうかと電話をしたら、しょうがねーな、とそれほどでもなかった。

「健司のとこにも来てない?」
「来てっけど、別に言うことないし」
「ごめん」
「謝るこたねーんじゃねえ? ま、本当のことなんだしよ」

藤真のあっさりした態度に拍子抜けした。仙道からも中途半端にすると加熱するだけだから、認めるだけだと言われている。あとは聞き流せと。

ケントのことは一切出てこなかった。おそらく、今回のことがなければ熱愛だと、そう色をつけられたかもしれないが、後から出したところで二股疑惑にもならない程度のインパクトのないただの写真だったのだろう。


けれど、バスケリーグ統合から優勝してこのかた、ずっと注目株で露出の多かった仙道の方が、女優を口説いてただの、来るもの拒まずだのとありもしないことをごく一部で書かれていた。藤真の従妹の玲はカモフラージュだとも。
次のシーズン開幕直前のこの時期に噴出した仙道の記事ゆえに、その宣伝のためじゃないかとも。


「こじつけるのも大変だな」
「彰、大丈夫? バスケに差し支えない?」
「オレ? オレは玲がいれば大丈夫。あ、開幕戦、見にこれるよな?」

こんな状況の中、自分が会場に行っていいのだろうか。でも仙道は今までと何ら変わらない。そして抱き寄せられれば、すべてを仙道に委ねたくなる。

「牧さんの隣だから安心しておいで」
「それは心強い」

「オレじゃ頼りないってこと?」と言って近づいてきた仙道の唇を、クスクスと口元に笑みを浮かべたまま受け入れた。
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