続・5年後
□Imprevu 8
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淡々とインタビューに答えていた仙道。このまま静かに終わる雰囲気を醸し出していたのに、突然手のひらを返したように行動にでた。
「個人的なことですが、この場をお借りして……」
何を言い出すのかと思えば、自分はチアの子たちと関係をもったりしてない。それは彼女たちの名誉を傷つけることであるからハッキリ言っておきたいと、最近たてられた噂を否定した。
他は見ぬふり聞かぬふりを出来ても、身内ともいえるチアリーダーを汚すような内容は許せなかったのだろう。
少しうつむきがちに聞いていた玲は、自分には聞き流せって言ったくせに、と結んだままの唇にかすかな笑いを浮かべていた。
──が、一瞬シーンと静まり返ったかと思うと、突如ザワザワと騒がしくなるのを感じ……
反射的に顔をあげると、仙道がこちらに向かってくるのが見えるではないか。
以前にもこんなことがあった。覚えた眩暈をどうにか抑え、何とかしてくれるのではないかと藤真を探すも、コートに整列したままチームメイトと笑ってこちらを見ている姿が目にうつる。
ダメだ── 行ってもいいのかと聞いたときの、いいんじゃねえ?との答え。それがいかに適当に発されたものだったか、今ごろよくわかった。それに安心してしまったのが間違い。
頼みの綱の牧をすがるように振り仰ぐも、彼の目にはもはや憐れみの色が見てとれた。
慌てふためく玲とは対照的に、仙道はあからさまに楽しそうな表情を浮かべ、ゆっくり近づいてくる。
目の前に来ると「あと……こういうことですから」と言って、玲の手を取り立ち上がらせた。
場内の空気を揺らすほどの歓声、悲鳴が沸き起こり、激しくフラッシュが焚かれる。
そんな中でも、いつもの涼しい顔で仙道は玲を引き寄せると、ボールよけのボードをまたぎ、玲の両脇をヒョイと持ち上げ乗り越えさせ、そのまま控室の方へと消えていった。
「こんなパフォーマンスまで期待しちゃいなかったんだが」と監督も苦笑い。ふたりの姿が見えなくなっても、まだザワめきは収まらない。なぜか拍手までおこった。