続・5年後

□Epice 2
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お土産のワインを手に、ソファーに座る仙道の前に回ってはじめて、彼がうたた寝していることに玲は気が付いた。

どうして寝顔はこうも無邪気なんだろう。こんな大きな男が子供のように見えてしまう。

車内での話。というか、告げ口か? 藤真のことだから大げさに言っているに違いない。それはわかっているが、やはり耳に入っておもしろいものではない。
女の子たちに、愛想笑いとはいえ、笑顔を返す仙道を想像してしまう。

でも、彼のこんな無防備な寝顔を見ることが出来るのは自分だけ──
今日はもう帰ってしまおうかと、怒ったふりして仙道を少し困らせてみたいなどと考えていたことは、もうすっかり忘れていた。



玲がお風呂から出てきても、まだ仙道はそのまま寝ていた。さきほど掛けたブランケットのズレを直しながら隣に座るが、いっこうに起きる気配がない。

「彰、風邪ひくよ?」と頬に唇を寄せて言った。が、反応はない。
「ベッドにいこ?」耳元でささやけど、少し身じろぎしただけ。
耳たぶを甘噛みすると、「ん……」とかすかな吐息が聞こえた。
「プロのアスリートがこんなとこで寝ちゃだめだよ」と言いながら、仙道の輪郭から首筋に唇を沿わせると、うん……と微かな返事が。

もう少し遊んでいたい気持ちもあったが、これ以上こんなところで寝かせるわけにはいかない。頬をペチペチとたたくと、仙道はかったるそうにうす目を開けた。

瞬きを繰り返す仙道の腕を引くと、のっそりと立ち上がり、おぼつかない足取りで歩き出す。
「もう、酔っ払いみたい」
背中を軽くおして、寝室に押し込んだ。


ベッドに倒れこむように横になった仙道に引っ張られて、玲も彼の胸の中におさまった。
「ん、玲、あったかい」
風呂上りの、布ごしにもほのかに温かい玲の体にのしかかるように抱き締める。

「ほら、居眠りしちゃうくらいなんだから、ちゃんと寝て?」
「玲と寝たい」
「はいはい」

仙道は額にひとつキスを降らせ、「玲とシてえって意味なんだけど」と覗き込んできた。
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