続・5年後
□Viande grillee 2
1ページ/2ページ
多種にわたるホルモンが続々と消費され、焼き網の上にはニンニクがごま油漬けで乗せられる。これが一段落したら、冷麺やクッパといきたいところ。
だが、藤真と仙道はこれで止めておくという。最後の締めまでいったら、カロリーオーバーになるからだ。
玲が席を外すと、「どんなプロポーズされたんですか?」と仙道が弥生に話しかけた。
「なんだよ、おまえ、珍しいな。興味あんの?」
「そりゃ、ありますよ。弥生さんを落とすなんて」
「参考にしよーとしてんじゃねえの?」
仙道はハハッと笑って、彦一も知りてえよな? と話しを逸らした。
「何の参考にもならへんよ。普通に『結婚しよう』って言われただけや」
「え!? あの姉ちゃんの彼氏がそう言わはったんか?」
口数少なく、温厚で物柔らかな人物らしい。いつも弥生の勢いに押されがちとか。
「めっちゃ緊張してるのが伝わってきてな。なんや、それが……どうにも…」と珍しく言葉に詰まる弥生に彦一はさらに唖然としていた。
「弥生さん、かわいいな」
「藤真くん、それもう一回言ってくれへん?」
アホ、姉ちゃん、社交辞令や!とツッコまれても弥生は楽しそうだ。
「なあ、仙道くんは考えておらんの?」
「何をですか?」
「また、そうやって〜。でも私はごまかされへんよ?」
仙道の甘い笑みに流されかけるが、そこはかなりアルコールが入っていようと副編集長の踏ん張りどころ。女性誌ではなく、れっきとしたスポーツ誌であるのだが……その点は個人的興味も作用しているらしい。
「オレはいつも考えてますよ?」
相変わらず本気とも冗談ともつかぬことを言う。けれど戯れではない。弥生はニッコリ微笑んだ。