続・5年後

□Teuf 1
2ページ/2ページ


「三井さん!」
「何だよ? 手ぐらい洗わせろ」

人の気配を感じた玲が、「彰?」とドアを開けそうになるから、飛びつくようにレバーを押さえつけた。

「待て、開けるな、玲。皆が来てる」
「へ? え? 玲ちゃん!?」

別の男の声に事態を飲みこんだ玲は、反射的にドアから離れた。だが、まだ半透明なそれに、薄々と心なしか肌色が滲みゆらめくさまは慎ましやかに艶めかしい。

「悪気はねぇ、見てもねぇけど! 玲ちゃん、ワリー」

悪いと謝るのに悪気はないのか、と仙道は笑いながら、「もういいよ」と扉を少しばかり開けた。

「誰?」「三井さん」
「危ない、出ちゃうとこだったよ」
「それはダメ」
「それより何か服を持ってきてくれない?」

部屋着として玲が着ている柔らかい綿素材のロング丈のワンピースを持っていったら、これだけじゃ透けるでしょ!ともう一度取りにいかされた。
リビングに戻れば、勝手に開けるぞと言うと同時に藤真が冷蔵庫を開ける。

「玲、来てんだってな。ちょうどいい、ツマミ作ってもらおうぜ」

これをそのまま玲に伝えていいものか……悩む。



「玲ちゃん、三井さんに覗かれたんだって?」
「神! 何言ってんだ。覗いてねー。未遂だ、未遂!」
「それだと覗こうとしたってことになりますよ?」
「あー! とにかく知らなかったんだから、あれは不可抗力だ!」
「仙道の目が怖いな」
「オレは玲の裸なんて何度も見たことあるぜ?」

ローテーブルを囲うようにどっかり座りこむ男たちに、もしかして私はホステス役?との疑問が玲の頭をかすめる。
仙道のためにちょうど野菜を麹漬けにしてきたものがあり、何のために作ったんだかと思いながら……それを提供するしかない。

皆と飲んでくるということは聞いていた。だから、明日の朝にあさりのお味噌汁を作ろうと買ってきたそれを、仕方がないので酒蒸しにする。

「ニンニク効いてて旨いな」
「クラブ玲の特製おつまみです」
「どこの場末のスナックだよ」

藤真をキッと睨みつけ、神の土産だという大吟醸『神鷹』いただいた。さすが山田錦、おいしい。

それにこのメンツが集まって家で飲む場にいるなんて、大学時代を思い出す。懐かしくもあり、何だか切ないほどの感傷の情に堪えない。
そんな気分に浸り、玲も仙道の隣で静かに飲んでいた。
次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ