続・5年後
□Conpagnon
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3連休は久しぶりのホームでの試合。日曜の午後、玲は越野と試合を観にきていた。そのきっかけとなったのは、先日の仙道の特集番組後に越野から掛かってきた電話。
美化しすぎだとか何とか言いながらも、淡々としたおまえらしさが出てたよと、当人をよく知っているからゆえの突っ込みと共にじっくり見てくれたらしい。
「オレ、最近、またバスケやり始めたんだ。地域のバスケ経験者を集めたチームで、土日だけ。仙道と一緒にやってたことあるって言ったら、スゲー驚かれたよ」
社会人になって数年たち余裕ができたのだろう。越野のバスケバカっぷりも相当なので、きっとそのうち再開すると思っていた。
彼も高校IHスタメン出場の実力者であり、少々のブランクを経たとはいえ、すぐに周囲を納得させたに違いない。だが、すぐ熱くなってしまう越野だから……
「張り切りすぎてケガしないようにね」
「それを言うなら、本業の仙道にだろ。でもあいつ、適当なくせにそういうの少ないやつだったな。これといった故障とかってないんじゃねえの?」
「そういうこと含めてアメリカで学んできたらしいよ? 本人曰く、ね」
「当てにならねえ……。運がいいだけだろ、きっとそうだ」
そう言いつつも、今の仙道を見ていれば、彼の積んできた努力や経験が越野にはよく解る。元チームメイトだからなおさら。高校3年間をだてに共に過ごしてきたわけじゃない。
試合後、控室に戻ろうとする仙道はふたりに向かって軽く手をあげ、さらに玲にはよろしくな、というように合図をよこした。
「ね、コッシーも明日お休みだよね? 彰がコッシーと飲みたいって。待たせちゃうかもしれないから、家に案内しといてって言われてるんだけど」
「懐かしいな。仙道の家に行くってシチュエーション」
懐かしい……けれど、以前の仙道の部屋とは全く違う。ヤらしいとこ住んでやがると越野は憎まれ口を叩いていたが、この辺りでと場所を指定し、あとは事務所がピックアップした2,3の物件から選んだまで。
「これだけの広さあるなら、一緒に住んじまえばいいのに」
「そう?」と曖昧に返し、玲は買ってきたものを整理しようと冷蔵庫を開けた。
越野はカウンターわきに備えられたスツールに座る。少し前に仙道が買ってきた。玲が料理している間、それに腰掛けてカウンターでビールを飲むのが最近の彼のお気に入りらしい。
「シーズン始まると試合で不在がちだから、一緒って言っても……」
「だからこそじゃねえの? それに帰ったときに誰かがいてくれたら嬉しいよ」
越野も大概、ロマンチストだ。ふふっと笑いながら、玲は冷蔵庫から取り出したものを越野に見せた。
「そうだね、誰かいるって必要かも。ほら、賞味期限とっくに切れてる」
仙道なら気が付かずに食っちまいそうだな、と越野はため息をついた。何をアメリカで学んできたんだか。
「玲ちゃんだってさ、あいつあんなだから心配じゃね?」
「キリがないっていうか、もう免疫ついちゃって」
「そうだな。心配するだけこっちが損だな」