続・5年後

□Projet sans planification 3
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「わかった、こっそり入れてやろう」

そう快諾してくれた田岡に、午後は部にも顔を出したいと仙道から願い出た。予選も近いこの時期、ここ2,3年IH出場を逃している陵南バスケ部の刺激になればと思った。力になりたい。


高校に戻ったふたりが並んで歩いていると、すぐに気付かれ、体育館はかなりの人だかりになった。
簡単に着替えた仙道が現れれば、現役バスケ部員たちは緊張した様子。そこへ入口の生徒たちをかき分けるようにして、スーツ姿の男が入ってきた。カメラを携えた彦一だった。

「良かった、間に合ったみたいやな」

田岡に挨拶すると、「玲さん、お疲れさまです」と隣にスタンバイするではないか。今日は予想外の人が集まってくる。

「相変わらずの情報網だね」
「おとといここに取材に来たときに、仙道さんが来はるって聞いたっちゅう次第ですわ」

そして慣れた手つきで撮影し、昔から変わらないスタイルでB5のノートに熱心に書きつけていた。要チェックや、というセリフとともに。

「玲さん、最近の仙道さんはどうですか? なんや変わったことあったら教えてくださいよ?」
「バスケのことは私なんかより、彦一くんの方が」
「いやいや、プライベートなことも藤真さんや仙道さんの場合は話題性抜群やから」
「………。変わったこと…ねえ……」

あったといえば、あった。つい先ほど。自然と抑えがたい喜びが吹きこぼれそうになり、玲は口元をおさえた。

それに、今のこの状況。バスケ部の練習にいそしむ仙道を間近で見守り、休憩時にはタオルとドリンクを手渡す。高校時代には出来なかったことが今になって実現するとは。

今日はいろいろなことが形になっていく。
願いが叶っていく―――



斜陽が海面に金色の影をキラキラと落とす、そんな時刻になっていた。部の練習はまだ続くが、そろそろ次の予定が、と仙道が言い出した。次の予定とは何だろう。聞いていない。

部員ひとりひとりへのアドバイスは練習中に身をもって示した。その効果は絶大で、すぐに全体の動きがよくなったのが、素人目にもわかるくらい。彦一は、「キャプテン仙道、懐かし過ぎますわー」としみじみと噛みしめつつ、チェックに余念がなかった。

最後に集合した部員たちの前で予選を勝ち抜けよと鼓舞して、仙道は田岡に向き直った。
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