続・5年後

□Affectueusement 07
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仙道は運がいい──
この計画を立ててくれた時、ソフィーの唯一ともいえる心配は天気だったそうだが、空は抜けるような青さに冴えわたっている。一点の曇りもない。

写真撮影にはいった。中世を思わせる城内で、城をバックにプリンセス気分で、石造りの城壁に腰掛け手を取り合いながら。
「“さっきのキスのように、もっと情熱的にやっちゃいなさいよ”」と煽られて、さらにここが異国の地で、しかもタイムスリップしたかのような異空間の景色に、解放的になったのか、はたまた吹っ切れたのか。だんだんとふたりのテンションがあがる。

森まで続く並木道では、お姫様抱っこスタイルで仙道は軽々と玲を持ち上げる。湖のほとりでは、跪きプロポーズの再現。さらにキスのシルエットを湖面に映し撮れば、前衛的で洗練された作品に。緑の風景にドレス姿で飛び込んで、あらゆるアングル、ポーズで撮影した。
終わってみると少し照れくさい。仙道は嫌な顔せず付き合ってくれたが。

「ぜってー藤真さんに見られたくねえな……」
「……うん、そうね。努力する」

「頼むよ」と念を押す仙道。だが、家族の口の端から漏れる可能性が大きく、それはなかなか難しいかもしれない。取り敢えず、今は頷いておいた。


今日は思ってもみない夢のような一日を過ごすことができた。あっという間に時間は経ち、あたりに夜の帳が下りはじめる。
少しずつ潤みゆく濃い青の中、わずかな灯りに古城は照らされ実に幻想的だ。木漏れ日が眩しい昼間もいいけれど、それと同じくらい夜はまた特別な趣きを見せてくれる。

薄闇に月が輪郭を現した。
太陽の光をうけ輝き、やがてその影をひそめるころに再び朝がくるだろう──


Aimer ce n’est point nous regarder l’un l’autre mais regarder ensemble dans la meme direction.
サン=テグジュペリ『人間の土地』より

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仙道・続5年後 Affectueusement 完
18/5/25
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