三井長編U

□conte 30
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思い描いた通りに物事は運ばなくても、それとは切り離して練習は頑張ったつもりだ。
誰か褒めてくれねーかな、なんて思いながら携帯をチェックしたら、少し前に姉からメールが入っている。それを見た桜輔は、ちょうど目の前を通りかかった宮城に尋ねた。

「三井サン? もう帰ったんじゃねー?」

困った様子の桜輔に、急いでんなら電話すれば? まだ近くにいるだろ、と手にある携帯を指さした。

「それが、三井さん、携帯をオレんちに忘れてったらしくて。それ伝えたいんすよ」
「桜輔んちに?」

こういう時の宮城の頭の回転は速い。

「なンだよ、昨日はあんなこと言っといて、ちゃっかり彼女とデートしてんじゃん! あのヒト、おねーサンの部屋に携帯忘れたんじゃねーの?」
「いや、そこまでは……えっ、どういうこと……?」

桜輔の言葉など耳に入らない様子で宮城はしゃべりまくる。

「ったく、彼女の部屋で何してたんだろーな、ちきしょー」
「写真見てたって……」
「アホ、今どき中坊でもそんなこと信じるかっ。家にふたりきりだろ?」
「はあ、オレが帰った時には三井さん来てて……」と反射的にありのままを答えながら、内心、何がなんだか。

「あーあ、そりゃ、おまえ邪魔したな」
「……そーいうことなんす…か?」
「あたりめーだろ」
「姉貴と三井さんって……三井さんの彼女って……」
「は? そこ!? ……あー…まさかと思うけど、桜輔、知らなかったとか……?」

宮城の恐れた通りに彼はコクリと頷く。その場の空気が一瞬にして固まった。

(ヤベー)
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