三井長編U
□conte 33
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木漏れ日がコンクリートの地面に揺らめく穏やかな朝。GW最終日。開け放った体育館の扉の前で、甘い春の空気を胸いっぱい吸い込めば、練習にも身が入ろうというものだ。
三井がやってきた。皆と一緒に挨拶を交わすと、クイッと顎で合図された。ちょっと来いということらしい。壁際でバッシュを履く三井のわきに、桜輔も座り込んだ。
「どっから聞こえてた?」
「あー……オレに言うとか言わないとか?」
本当のことだ。この質問にはハッキリと答えられる。だが、次の疑問には……
「あいつ、何かおかしいって疑ってたぞ?」
「何を…ですか?」
「さあ? よくわかんねーけど、おまえが知ってたんじゃないかって?」
「そりゃ、姉貴の気持ちは知ってましたよ……?」
とっさに話を逸らせながら、内心ヒヤリとしていた。宮城には、自分がバラしてしまったことはぜってー内緒だ!と念を押されている。
どちらにしても、遅かれ早かれ数時間の差で知ったような、いや、宮城から聞いてなければ外に出てみようなどと思わなかったような。
「でもこんなに早くどうにかなるとは思ってませんでしたよ。いつの間に……?」
「ソコ…突っ込むな……」
「きっかけはオレっすよね?」
「だからってケガはもう御免だからな」
いいことなんてない。ケガ自体は。でも起こってしまったことなら、ただでは立ち上がらない。
「予選までには間に合わせます! だから決勝リーグ、姉貴と見に来てくださいよ」
「ああ、そうだな」
「オレ、嬉しいんですよ?」
屈託のない口調には裏もなければ、駆け引きもない。三井はその気持ちに応えるように、結んだままの唇を横にひき、しっかりと笑みを滲ませ頷いた。
「さっ、始めるか。 弟をちゃんと復帰させねーと、何言われるかわかんねえからな。お前のおねーさんに」