三井長編 続編・番外編
□suite 06
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久しぶりに桜木も来たので、宮城と3人で練習後に飲みに行こうという話になった。三井は車だったので、いったん置きに戻ってから指定された場所に向かう。
以前に聞いたことがある。あの桜木軍団のヤローの家がやってる店だと──
「いらっしゃい、お、花道、ミッチー来たぞ」
マジでおまえんちなんだなと言いながら見渡すと、見た目はごく普通の焼き鳥屋のわりに女性客が多い。そしてカウンターの一番端にいてもひと際目立つ桜木と宮城。
だが、それよりも……その手前のテーブルに座る女性グループに一斉に振り向かれたことのほうが、三井にとっては驚きだった。
「え!? ミッチー」
「ミッチーって、あのミッチー!?」
見知った顔もないのになぜかミッチー呼ばわりされ、挙句に“あの”と形容される不可解さ。誰だ?と思っていると、宮城がニタニタと笑いながら手招きしている。
「三井サン、有名人っすね」
「あ? 意味わかんねー」
「紫帆サンのお友達だそうっすよ?」
思わず額に手をあてる。合点がいった。
「紫帆がお世話になってます〜」
「やっと会えたあ、ミッチー!」
それなりにアルコールが入っているらしく、陽気な集団と化している。
「噂はよく聞いてますから!」
何を言われているか、わかったもんじゃない。怖えーな、と三井は心の中でこっそり呟いた。それなのに宮城が「どんな噂?」と愉快そうに聞いてしまうではないか。
が、出てきた話は、デート中に藤真と仙道と合流したとか、藤真はすごく気が利く人で、仙道は意外と話しやすかったと紫帆が言っていたとか何とか。
「三井サンの話じゃねーじゃん」
うるせえ、と三井はビールをグイッと傾けた。
「あれ、ホントだ、あはは。でも、紫帆が幸せそうなの、端々から感じてますから」
「そうそう、肝心なこと、照れて言わないけどわかるよね」
昔からの友人だということが伝わってくる。今でも月に1,2度集まっている女子校仲間というのが彼女たちなのだろう。
とすると、ふと疑問が浮かぶ…… あれ、今日、紫帆は? 彼女は一緒ではないのだろうか?
ミッチー、やるじゃねーかと盛り上がる桜木をよそに、三井の思考はある方向に傾き始める。