三井長編 続編・番外編

□suite 11
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会ってこいよ──

自分の彼女を抱き締めて、元カレに会ってくるよう勧めるなんてどうかしている。矛盾も甚だしい。

「なんで……? 私、寿に疑われるのが一番嫌なんだけど……」
「そうなりたくねーからだよ。ハッキリさせてこいよ」

ここで曖昧にしては、そのうち紫帆の気持ちまで疑いかねない。そして疑えば疑うほど、感情が変質して違うものになっていきそうな危うさがある。
“元カレとの久しぶりの再会”それに対する躊躇はもちろんあった。かといって他に妙案はなく……思わず、抱き締める腕にさらに力が入った。

「寿がそう言うなら。いいのね?」
「あ……まあ、その…仕方ねえだろ? また突然訪ねてこられるより、カウンター仕掛けるっつうか……」

三井の声音に迷いが混じる。次の言葉を待っていると、はあ〜と大きなため息とともに、何かを打ち消すように首を振るのが背中から感じられた。

「…やっぱ……」「え?」
「いや……だから…」「なに?」

紫帆は努めて笑いを堪えた。
なにかにつけ、最近、三井に対してある想いが湧き起こる。彼が“かわいい”“かわいらしい”

出会ったころはもとより、彼を好きになった時にさえ、こんな感覚を持つことになろうとは思いもしなかった。
そして、そんな彼を感じられるのは自分だけでいい。他の人には見せたくない。
だが、こんなに紫帆は三井にひたむきだというのに、まだ彼はブツブツ言っている。

「信じてるけどよ……、あー、ちくしょー、仙道のせいだっ」
「なんで仙道さん?」

紫帆の耳元でのつぶやきは聞こえて当然だ。
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