三井長編 続編・番外編

□Dans le jardin(後)
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にわかに秋の色を深めた空。透明感を増した風が肌にさらりとして気持ちがいい。

「それにしても、藤真さんと仙道さんとこんな風に会えるなんて夢みたいだよなあ」
弟はいまだ興奮冷めやらぬ様子だ。
「誕生祝いが色気なくて、でけぇ男ばっかでいいのか? そう素直に喜ばれると申し訳ねえくらいだな。そうだ、受験終わったら試合見にこいよ」
「行きたいっす。やべえ、頑張ろ、オレ」

「そうだな、気になる女でも誘ってよ、行けばいいんじゃね?」

何気なく発した言葉だったのだが、「三井さんみたいにね」と仙道が付け加えるから、三井は自分が掘った小さな墓穴に落ちたような心地がした。おお、そうだと藤真の記憶を呼び覚ましてしまった。

「紫帆さんと来てくれた時って、あれ、三井の誕生日だったよな」
「おまえがその日を指定したんじゃねーか」
忌々しそうにトゲトゲしい口調で返す。それ以上余計なことを言うんじゃねえ……という視線を投げたのだが。

「へえ、そうだったんだ。誕生日……三井さんにも何かサプライズあったんすか?」とまたもや純粋なる疑問から桜輔が話を転がしてしまう。彼に他意はない。

「ああ……。ま、おまえの驚いた顔には負けるよ」
「そりゃ、そうっすよ。口から心臓飛び出るかと思いましたもん」

うまいこと話を逸らせることには成功した。だが、三井は藤真たちが可笑しそうにニヤリと笑いを浮かべるのを見逃さなかった。
彼らにはなぜかすべてに近いことを知られている。自分の誕生日だと知るはずもないと思っていた紫帆が秘かに準備して祝ってくれたこと。そして彼女と過ごした甘い甘い夜。

バラすなよ……との本日二度目のアイコンタクトを送る。
まったく── 今日の主役よりもこいつらが一番楽しんでんじゃねーかと思わずにはいられない。そして、何だかんだ自分も小気味よさを感じて、三井もその口元をほころばせた。
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