三井長編 続編・番外編

□En confiance 7
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土曜の午後の湘北高校体育館。三井が来れなかった先週から、新入生も正式に部員として登録された。湘北でバスケがしたいと集まった者たちがほとんどで、やる気に満ち溢れている。

自分にもこんなころがあった。その後、紆余曲折あったわけだが、何とも懐かしい。心機一転、予選に向けて新しい体制を築き上げていきたいところ。

そんな様子を聞いて、気になったのだろう。今日は珍しく彩子が見に来ていた。となれば宮城が来ないわけがない。
その宮城のハリキリ具合につられるように、また、漠然と抱えるすっきりしない気持ちをはらすように、三井もかなりハードに練習に参加した。


「どうしたんですか? 気合い入ってますね」と彩子がタオルを投げてよこした。
「そうか……?」
「少しはスッキリしました?」
「………」

汗とともに、訳の分からないないフラストレーションも少しは拭い去れた気がする。開け放たれた扉に寄りかかって座り、空を仰げば、自分は考えすぎだったのではないかと三井は思った。
ここのところあまりに忙しかったために、余裕をなくし、ちょっとしたことも何でもないことも、すべて悪いほうに結びつけてしまったのではないだろうか。

「なあ、彩子。せっかくだ、このあと飲みにいこうぜ?」
「いいですね」と彩子はきれいにニヤリと笑った。



練習後に居酒屋に移動してからも、宮城はずっと不満気だ。
「なんで、アヤちゃん誘って、オレが後なんだよ……」とブツブツ言っている。

「そりゃ、彩子と飲みたかったからに決まってんだろ」
「なんすか、それ。どーいう意味!? まさか三井サン…アヤちゃんを……」
「なんですぐにそーなるんだ。男と女の間にはそれしかねえわけじゃねーだろ。オレは彩子と久しぶりに話してえと思っただけだ」と呆れたように言い捨てた。

だが言ってから、自分で自分がおかしくなった。先日見かけた紫帆と上司の姿が心に引っかかっているのは、そういう目線で勘ぐったからではないのか。自分だって宮城と変わらない。むしろ素直にそれを出せる宮城が羨ましいくらいだ。

「だから、礼儀としておまえにも声かけただろーが」
「それじゃオレ、おまけじゃねえっすか!?」

そんな不毛なやり取りに辟易した彩子が、「そういう三井さんは、今日は紫帆さんいいんですか?」と問いかけてきたが。

「ああ、あっちが都合悪いって……別にいいんだよ、だから、それは」との三井の答えは煮えきらない。

「何すか? けんか? ついに愛想を尽かされた?」
「何でだよ……何もねえ、けど……」
「けど?」
「……まあ、なんだ? ちょっとあいつの様子がおかしい気が…しなくもねえ……な」

そんなしどろもどろの三井に、宮城はしっかりと食いついた。

「三井さんが何かしでかしたんじゃねーの? 紫帆サンがヒくようなことベッドで強要したとか」
「何でおまえはそういう発想しか出来ねえんだ!」
「でも三井さんに心当たりはないの?」
「彩子まで……。結局、オレなのかよ。まあ、ここんとこ仕事忙しくて、そっち優先するようなとこあったけど」
「彼女、そういうこと不満に思う人でしたっけ?」

三井は首を振ったが、それは否定の意味とともに、わからないと言っているようだった。
普段からプライベートよりバスケを優先しているところがあるわけで。それを許してくれる紫帆に自分は甘えていたのかもしれない。
そこになおかつ仕事が重なって、さすがに嫌気が差したのだろうか。
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