藤真長編U
□conte 27
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渋谷の喧騒を行き過ぎた先にあるその建物は、 1,2階は通常通りのレストラン営業をしており、男女ふたりの組み合わせがほとんど。その3階のパーティースペースを借りているということで、藤真たちは1時間ほど遅れて到着した。
「内輪って聞いてたけど、思ったより人数いるんだな」
「彼氏彼女同伴OKだからだろ。ここで皆と騒いだ後はふたりでしっとり? あー、うらやまし……っておまえもそうか!」
ちくしょーとやっかむ矢野に、もう聞き飽きたぜと呆れた顔を向けてから、藤真の目は茉莉子の姿を探した。
照明の落とされた店内にはところどころにロウソクがともされ、そのほのかな灯りのもとに見知った顔が見える。だがカジュアルフォーマルでということなので、いつもと少し雰囲気が違う。
「あ、藤真くん。茉莉子、あっちにいるよ」
教えられた方へ行けば、グラスを片手に楽しそうに友人と笑い合っている茉莉子が見えた。中のひとりがこちらに気付き、来たよとか何とか言ったのだろう。茉莉子も振り向いた。
「ミニスカサンタか。似合ってるじゃん」との藤真の言葉は茉莉子の友人に向けてのもの。
「主催者ですから、頑張ってるでしょ? ひとり者はね、このくらいハジけないとやってらんないの」
そう彼女は言うと、「もう一回乾杯しなおそうか」とマイクを取り出し呼びかけ始めた。
A学バスケ部期待の星の藤真くんと矢野が来たので、乾杯しなおしまーす、とか何とか。その間に茉莉子がカウンターからグラスを持ってきてくれた。
「はい。お疲れさま。思ったより早かったね」
「ああ、さすがに今日は先輩たちもソワソワしてて、スゲー勢いで片づけが終わった」
茉莉子が黒いワンピースなのは遠目にもわかったのだが、それはベロア素材で近くで見ると柔らかな光沢に彩られて上品なものだった。だが袖はレースになっており、透けてみえる肌がセクシーさを醸し出している。
「クリスマス仕様?」
「藤真くんも、いつものウィンブレじゃないんだね」とジャケットを羽織る藤真を見上げ、茉莉子は冗談交じりの軽い声でそう言った。ただでさえ、まだ藤真と付き合いだしたことが信じられないのに、いつもと違う彼になおさら落ち着かない。
だがそこに「腹減った」と藤真の現実的なひとこと。茉莉子はフッと笑みをもらした。やはりいつもの彼だ。
「そうだよね。ビュッフェ式だから取りに行こ」