藤真長編U
□Désir naturel 2
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溢れんばかりの雑多な色と光と音が入り混じる街。そこに多種多様な人々が集まり、夜の渋谷の喧騒は途切れることがない。だが、ひとたび店に入ってしまえばその騒々しさとは切り離され、また別の活気に包まれる。
とあるビルの5階に茉莉子はいた。
高等部からの気の置けない友人たちと合流するやいなや、観戦に付き合ってくれたアッコが藤真が目の前で言い寄られていたことを話してしまうから、しょっぱなから話題の的になった。
「他大のマネ―ジャーかあ。また接点あるかもしれないね。試合の会場とかで」
「なんか根性ありそう。ほら、最後まであきらめるな的な?」
「茉莉子、ぼーっとしてると藤真くんとられちゃうかもよ〜」
「大丈夫、大丈夫。マネージャーより従妹のほうが断然かわいかったから」
「それ、フォローになってない!」と笑って答えたものの、胸の中は微かに波立っている。必然的に茉莉子のアルコールがすすむ。
いつものメンツで気兼ねなく楽しく飲んでいるのに、無性に藤真に会いたくなるのは、きっとお酒のせいだろう。お酒のせいにしたくて飲んだのかもしれない。
そしてそろそろ帰ろうかという時分、ついに酔っぱらったのだろうか。視界に藤真がうつった。
「藤真く〜ん、おかえりー!」と皆が口々に歓迎する中、「おかえりじゃねえだろ……って、ん?」と藤真が周りを見回し怪訝な表情を浮かべた。全員見知った顔。茉莉子の友達。
「この6人で飲んでたのかよ」
「うん、恒例の女子会」
藤真はアッコをチラッと見た。目があった彼女は「参加する?」とニヤニヤしながら聞いてくるではないか。してやられた。
「遠慮する。茉莉子、もらってっていい?」
「そのつもりだったから」と言いたいのをアッコはぐっと我慢して、にっこり笑って見送った。
藤真の突然の登場に茉莉子は驚いていた。エレベーターの前に立つと、階数を知らせる表示を見上げる動作にかこつけて藤真の顔を見た。いつもと変わらない。いつもの藤真。どうしたというのだろう。
「あの様子じゃ、茉莉子もかなり飲んでる?」
「それほどでもないけど……」
控えめに反論する茉莉子に藤真は軽く眉間にしわを寄せる。
エレベーターのドアが開き、出てきた人を避けようとした茉莉子は少しふらついた。「ほら……」と腕をつかまれ、そのまま押し込まれるように乗り込むと藤真はすぐさまクローズのボタンを押した。
「どこがだよ」
そう言うと、言い訳の言葉を塞ぐように藤真の唇が茉莉子のそれを捕らえた。
「ワイン?」
「………白か赤かわかる?」
もういちど藤真は茉莉子に、今度は深く口付けた。エレベーターが1階に止まるまで――
「白……かな」
「当たり。かわいらしく甘口のね。」
「かわいくねえ量、飲んでんだろ?」
「そーかも」
認めてしまえば、急に酔いが回ってきた気がするから不思議だ。そのまま藤真に寄り添い歩いた。