仙道 前半戦

□conte 01
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「新しくできたコンビニ行こーぜ?」

先日オープンしたばかりの学校に一番近い店となったそれは、テニスコート脇の裏門を抜けた先にある。週末の昼食時に越野は仙道を誘った。
まだ5月だというのに夏を思わせる日差しが照りつけ、うんざりするほど暑い。連れだって歩いていると、その身長ゆえに目につくのか、声をかけてきたのはテニス部の女の子。

「コッシー、珍しいね。どこ行くの?」
「よお。そこのコンビニにメシ買いに行くとこ」
「こいつら同じクラスの奴らで、こっちの小夜子の方は中学からの腐れ縁」と小柄な子の方を指して、越野は仙道に小声でいったつもりだった。

「腐っててもいいからさー、ついでに買い物たのまれてよ」
「あ、聞こえちまった?」
「私はポカリ。玲は?」
「はちみつレモン! コッシーありがと」
「ちっ、はじめてのお遣い決定かよ」

愚痴りながらも素直に頼まれたボトルを買ってくるところが越野らしい。何だかんだ言っても優しいのが彼だ。きっと彼女たちもそれを見越しているに違いないと思いつつ、仙道はフェンス越しに何気なく練習を眺めた。

陵南テニス部── こちらも全国への期待がかかっていると聞く。
ぼんやりと見ていれど、自然と目が留まるのは、さきほどはちみつレモンを頼んだ女の子だ。テニスのことはわからないけれど、明らかにうまい。他に何人もボールを打ち合っているのに彼女に目がいく。フォームがきれいなのか、それとも彼女自身が……だろうか。
越野が届けに行っている間、仙道は結局、彼女を目で追ってしまっていた。

「さっきのあの子、うまいな」
「ああ、玲ちゃんだろ? 中学んとき県ベスト8だって。1年の中じゃ抜群にうまいらしいぜ」

へえーと納得してると、その時ちょうど玲のショットが決まった。
「カッコいいな──」
自然と漏れた呟き。

「仙道、女の子にはカッコいいよりキレイとかじゃね?」
「そっか?」

当たりめえだろ、と越野は笑った。
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