仙道 前半戦

□conte 03
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「コッシー、もったいないって言ってたよ?」

やっぱり越野か、と仙道は想像通りで笑いがこみあげる。長い脚を持て余すように投げ出して座っていたが、体勢を変え、身を乗り出すように胡坐をかいた。

「ま、何にしても知りもしない子と付き合ったりは出来ないよ。だからといって、理解し合える相手となんて望むのは贅沢なのかな……」
「……わかる気がする」
「あ、初めて同意してもらえた」
普通これ言うとスゲー嫌な顔されるんだよなと仙道は笑った。

「ま、だから最近キッパリ断わってるつもりなんだけど。それもヒドイのか?」
「あはは、バスケしてる時以外の仙道はしょうもないってコッシー言ってた」
「越野も大概ヒドイな」

玲との会話は面白いなと仙道は思った。サラサラとテンポよく返ってくるかと思えば、まったりと穏やかな空気が流れる。そもそも女の子と恋愛について話したことなんて初めてかもしれない。好きだと言われることは多々あっても。
たいていの女の子は仙道のことをいろいろ知りたがって質問ぜめにし、めんどくさいから愛想よく返しつつもそれに辟易としてきた。今の玲との会話は、わかるよな?と慣れ親しんだ感覚が心地いいくらいだ。

そろそろ行かなくちゃねと玲が立ち上がり、ハシゴに手を掛けたので、仙道はそのまま下に飛び降りた。

「ちょっと、何で先に降りるの!?」
「え?」
「スカートの中、丸見えになるじゃん!」
あー、なるほど、と仙道はわざと見上げるふりをする。
「手、かそーか?」
「やだ、見ないでよ。早く先行って!」

そんなやりとりをしながら、屋上を後にした。



男バス部室はすでに満員御礼状態。やや遅れてやってきた仙道は自身のロッカーを開けた。何だか今日は気分がいい。

「仙道、昼休みに玲と一緒に歩いてたのなんで?」
「ああ、告白され……」
「はあ? 告られた? うそだろ、そんなの聞いてないぜ……」
着替えのウェアを取り落し、上半身裸のまま仙道に詰め寄ってきたのは越野。

「ちょ、違うから落ち着け。告白されてる現場に居あわせただけだって。玲ちゃんが男に告られてたんだよ。早とちりすんな」
「なんだよー、紛らわしい言い方すんな! ハハ、そうだよなあ、まさか玲ちゃんが仙道なんかを」
越野は心からホッとした様子だ。

「植草のクラスにも玲ちゃんにマジ惚れしてるヤツいるってよ」
「へえ、すごいな」
「……おまえがそれ言うの? すっげえムカつく」

あ、またスゲー嫌な顔されちゃった、と仙道はひとり笑みをこぼした。
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