仙道 前半戦

□conte 11
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土曜の練習の昼休憩、仙道と越野は部室棟に向かって歩いていた。その前で談笑する男女数人。玲たち女子テニス部とサッカー部のようだ。妙に爽やかな空気が辺りに漂う。

「おう、仙道、真面目にやってっかー」なんてクラスメイトである中のひとりが声かけてくるものだから、「おまえの不真面目も有名だな」と越野が聞こえよがしに呟く。その嫌味に苦笑いしながら、彼に手を振りかえし部室に向かった。

「今のヤツ、1年でレギュラーとれそうなんだってな。オレもがんばらねえとなー」
越野は小さく息を吐いた。
「へえ、うちのサッカー部って強えの?」
「ここ何年かパッとしなかったけど、顧問が変わって気合入ってるって。あと新キャプテンの島さんがすげえ上手いらしい」
「島さん? サッカー部のシマ……?」
「さっきおまえのクラスのヤツの隣にいた人」

仙道は記憶を辿るように少し首を傾げた。

「んー、たぶん……前に屋上で玲ちゃんに告ってた人だと」
「マジ? すげえ、島さんだったんだ。サッカー部のモテ男。でも振っちゃったんだよな?」
「玲ちゃんはごめんなさいって言ってたけど、諦めないって感じだったぜ」

あの場に居合わせてしまったこと、そのあと玲と会話したことを仙道は思い出す。自然と口角があがった。

「じゃ、頑張って玲ちゃんにアプローチしてるんだ。やるなあ。玲ちゃん、傾いちゃうかな」
「そういうもんか?」
「気持ちが動くこともあるだろ。そんなのってちょっとしたことがきっかけなんじゃねえの? 気付いたら恋に落ちてたって良く言うじゃん」


気付いたら……か。なぜか仙道は落ち着かない気持ちになる。だいたい先ほどの楽しげな玲たちとサッカー部に気づいたときから、何だかスッキリしない。何をもってそう感じるのか、うまく説明できないが、気にいらないものは気にいらない。
あー、オレ、最近おかしい!と自分でも自覚せざるをえない。そしてその理由は薄々わかっていた。
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