仙道 前半戦
□conte 15
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告白から3日あまり―― 遠目で仙道を見かけることはあっても、鉢合わせる機会はなく過ぎていた。
玲は何だか落ち着かずも そのことに少しばかりホッとしていた。が、6限目が終わった直後にガラッと教室の後ろのドアが開き、ひときわ背の高い男が入ってくるのが 目の端に入る。そして自分のほうに歩いてくる気配がするではないか。
次の瞬間、「ちょっと一緒に来てほしいんだけど」と頭のずっと上のほうから声がした。あまり時間ないと目も合わせずに返事をすると、じゃ、ここで、と話しはじめようとするから玲は慌てた。まだ人がいっぱいいる教室で、しかも仙道は目立ちすぎる。
立ち上がると、それを待っていたかのようにさっと腕をとられ、連れ去られるように教室を出るはめになった。
仙道は玲の手をひいて、廊下をためらいもなく歩いていく。今の時間は帰宅や移動をする生徒でごった返しているが、器用にすり抜ける。そして非常階段のドアを出たところで止まった。玲は自分のクラスだけでなく、通りがかりの生徒たちの注目も浴びることになってしまったことに後悔する。最初から素直に従っておけばよかった。
校舎つきあたりの外階段。風が吹き抜け 玲の髪を揺らしていく。上から見下ろされる仙道の視線に耐えられず、思わずうつむいてしまう。
「……わかってたけど、仙道、マイペースだね」
そう言いながら階段に座ると、仙道は玲と高さが同じになるように、数段下に腰かけた。長い脚を少し開き、自分の膝の上に頬杖をつき、玲に顔を向ける。
「そう? 余裕ないよ。玲ちゃんに避けられちゃうとなー」
どこが余裕ないんだ? と突っ込みたくなってくるような笑みを見てると、3日前のことが本当にあったことなのかと記憶があやふやになってくる。
「避けてないよ……避けてないけど、あの…この間のことは夢だったのかも?なんて……」
恐る恐るそう言うと、仙道はアハハと声を出して笑い出した。
「ハハ、夢って。オレ、すげえ勇気出して言ったのに」
「だって……」
あの時、目を開けると息がかかりそうなくらい仙道の顔がすぐ目の前にあったことを思い出して、玲は少し赤くなった。それを見て、仙道は満足そうに微笑む。いつも強気な玲の困惑する様子がかわいくてしょうがない。
「玲ちゃんはさ、オレのこと嫌い?」
そんなことはない、玲は答える代わりに首をふる。
「じゃあ、好き?」
「……なに、この誘導尋問」
「んー、バレたか」と仙道は笑う。