仙道 前半戦
□conte 16
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教室に戻ると、越野とテニス部員たちがなぜか集まっていた。そして、示し合わせたように皆が一斉に振り向くではないか。視線が怖い。
「な、なに……どうしたの?」と玲が後ずさると、後ろからきた仙道の胸にぶつかった。見上げるとニッコリしている仙道と目があう。つい先ほどには、その仙道とキスしていたかと思うとまたドキドキしてくる。
「あれ、皆さんお揃いで」仙道は教室を見渡して、何喰わぬ顔で言った。顔を見合わせた小夜子は越野に、ほらっと無言で促した。
やっぱオレかよ?――
「お、おまえら、どこ行ってたんだよ?」
何それ、もっと違う聞き方できないの!と女子たちの厳しい視線を浴び、苦々しい顔をする越野をよそに、「ふたりきりになれるとこ」と仙道は飄々として答えた。玲はギョッとして、仰ぎ見る。
「え、じゃあ」と小夜子が嬉しそうに聞き返すと、「うーん、どうかなあ」とニヤリと曖昧に濁す仙道。
「何だよ、それ。どっちなんだよ」
「YESでいいんだよな?」と玲を覗き込んで聞いた。
「………」
「沈黙は肯定ってことで」
仙道の笑みは崩れない。
「脅迫だよ……これ」
玲は呟いた。
「部活終わったら待ってて」と仙道は玲に言い残して出ていってしまうから、越野は慌てて後を追った。
残された自分はどうしたらいいのだろう。皆の好奇の視線が突き刺さる。
「落ちた?」
「……はい」
「素直じゃん」
「あのペースにハメられた」
「まあ、しょうがないね、諦めな。でも仙道マジだよ」
「そうそう、こうなるってわかってたよ」
でも良かった!ふたりがまとまって嬉しい!皆が玲の頭をグリグリとなでた。
「私……仙道のこと、好きになってたみたい」
何を今さら、知らなかったの玲だけだよ、そんなの見てればわかるよと口ぐちに言う友達を見て、好きになりかけてると言った自分の言葉が少し間違っていたことに気づく。
もうとっくに好きになってたんだ――