仙道 前半戦

□conte 17
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喧騒あふれる業間休み、植草が越野のところへコソコソとやってきた。そして手招きして玲のことを呼ぶ。

「すっごい噂になってるんだけど知ってる?」

何を? と言いたいところだが、そんな素知らぬ振りは通じないだろう。昨日、仙道に手を引かれて廊下を歩いているところは大勢の生徒に見られている。今朝すでに同じクラスの女の子からバッチリ聞かれた。

「玲ちゃん、仙道くんと付き合ってるの?」

返答に困ったが、否定するのもおかしいので曖昧に頷くと、ホント?すごーい!と不思議なリアクション。どういう意味なんだか。身長だけでなく、あの髪型含め、黙っていても目立ってしまう仙道。

「まあ、隠すいわれはないし、だいたいアレ自体を隠せないでしょ」と言うと、越野たちにプッと笑われた。

「そのアレさー、今朝の朝練も超ご機嫌だったよ」と植草がこそっと教えてくれる。バスケ部で一番小柄だが、一番聡明な彼にそう言ってもらえると何だか嬉しい。

「しばらく周りがうるさいだろうなー」
「ごめんね」
「なに謝ってんだよ。まあ、なんつーかオレらもけっこう嬉しいんだよ」と越野が照れながらも明かしてくれた。

植草が戻っていくと、入れ替わりで他クラスのバスケ部の面々や、テニス部の女子が駆け寄ってくるではないか。確かにしばらく落ち着かないかもしれない。


時を同じくして── 仙道はサッカー部のクラスメイトに詰め寄られていた。

「なあ、マジ? 芹沢さんとって」
「まだまだ努力が必要なんだけど、な」
「はあ、やっぱりそうか。あー、仙道かあ
、ったくどうしてくれんだよお」と笑いながら仙道の胸に拳をパンチしてくる。彼が言いたいことは何となくわかる。だいたいそこが今回のきっかけを作ってくれたような気がする。

悪ぃな……でも ゆずれねぇんだよ、と心の中でひそかに思った。
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