仙道 前半戦
□conte 18
2ページ/2ページ
体育館では、ボールを出したり、ゴールを降ろしたり、一年生は準備にいそしんでいた。そこに植草が湿布を手にしたまま走ってきた。
「せんどー!」
玲が保健室に運びこまれた、と息を切らせて伝える。
「サッカーボールが直撃したらしいぜ、キャプテンが抱きかかえて飛び込んできてさ」
「玲、大丈夫?」
本人は大丈夫って言ってたけど、と聞いて仙道は安堵の溜息をついた。
「……なあ、キャプテンって?」
「ん? サッカー部のキャプテン」
「わりい、ちょっと抜ける。すぐ戻るから」と言うやいなや、仙道は校舎に走っていった。
保健室のドアに手をかけると、ちょうど開いて出てきたのは島。
「お、さすがだね。今呼びに行こうと思ったのに」
あの……と言葉に詰まると、軽い脳震盪だって。安静にしてれば大丈夫だそうだと答えてくれた。
「ボールが当たったんだ。申し訳ない、彼女にケガさせてしまって」
「いえ……そんな」
殊勝に謝られて、仙道の方が面喰ってしまう。玲が運びこまれたと聞いて、動揺してたからかもしれない。それに島が抱きかかえて運んだと聞いて、余計に慌てたのも確かだ。
玲?と呼びかけると、「え、ウソ、仙道?」と早すぎる仙道の登場に驚いていた。
「大丈夫?」
「うん、だいぶ」と笑みを見せる玲の頭をそっと撫でた。
「たいしたことないから、早く部活戻って。あと悪いんだけど、テニス部の誰かに言っておいてくれない?」
ああ、と返事をして、校医の先生の目を盗んで軽く玲の額にキスを落とした。
テニスコートのわきで、小夜子をつかまえ、玲のことを伝えると、ちょっと前にサッカー部のキャプテンが来て、テニス部のキャプテンに謝っていったというではないか。
よく出来た男だな、と仙道は感心するとともに安堵した。
のんびりしてたらヤバかったな――