仙道 前半戦

□conte 18
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体育館では、ボールを出したり、ゴールを降ろしたり、一年生は準備にいそしんでいた。そこに植草が湿布を手にしたまま走ってきた。

「せんどー!」

玲が保健室に運びこまれた、と息を切らせて伝える。

「サッカーボールが直撃したらしいぜ、キャプテンが抱きかかえて飛び込んできてさ」
「玲、大丈夫?」
本人は大丈夫って言ってたけど、と聞いて仙道は安堵の溜息をついた。

「……なあ、キャプテンって?」
「ん? サッカー部のキャプテン」
「わりい、ちょっと抜ける。すぐ戻るから」と言うやいなや、仙道は校舎に走っていった。

保健室のドアに手をかけると、ちょうど開いて出てきたのは島。

「お、さすがだね。今呼びに行こうと思ったのに」

あの……と言葉に詰まると、軽い脳震盪だって。安静にしてれば大丈夫だそうだと答えてくれた。

「ボールが当たったんだ。申し訳ない、彼女にケガさせてしまって」
「いえ……そんな」

殊勝に謝られて、仙道の方が面喰ってしまう。玲が運びこまれたと聞いて、動揺してたからかもしれない。それに島が抱きかかえて運んだと聞いて、余計に慌てたのも確かだ。

玲?と呼びかけると、「え、ウソ、仙道?」と早すぎる仙道の登場に驚いていた。

「大丈夫?」
「うん、だいぶ」と笑みを見せる玲の頭をそっと撫でた。

「たいしたことないから、早く部活戻って。あと悪いんだけど、テニス部の誰かに言っておいてくれない?」

ああ、と返事をして、校医の先生の目を盗んで軽く玲の額にキスを落とした。


テニスコートのわきで、小夜子をつかまえ、玲のことを伝えると、ちょっと前にサッカー部のキャプテンが来て、テニス部のキャプテンに謝っていったというではないか。
よく出来た男だな、と仙道は感心するとともに安堵した。
のんびりしてたらヤバかったな――
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