仙道 前半戦

□conte 19
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 翌日に朝練のないときは 仙道は玲を家まで送る。なのでそれはそんなに数は多くないけれど。
父親が転勤が多い仕事のため、母の実家に近いこの湘南地区の駅近くにマンションを購入した。実際、現在も父は大阪勤務であり、母は月の三分の一ほど、そちらに行く二重生活を送っている。

エントランスから少しはずれたところで最後に言葉を交わしていると、名前を呼ばれた。仙道も振り向くと、したり顔の若い女性が立っていた。
少し年上だろうか、きれいなストレートのボブに、軽く施された化粧が映えるハッキリした顔立ち。どう見ても──

「彼?」
「うん、そう……」
「照れちゃって。あ、玲の姉です」
「初めまして。同じ高校の仙道です」

やっぱりお姉さんだった。大学生の姉がいるとは聞いていた。

「大きいのねえ」

言われると思いました、と仙道は人懐っこい笑みを見せる。その好感度が高かったのか、玲を差し置いて会話が盛り上がっていくではないか。

「先輩? えー、同級生なの!?」

仙道の高校1年らしからぬ落ち着きと、柔らかな物腰にすっかり感心した姉は、ちょっと寄っていかないかと提案した。遠慮する仙道を制し「ほら、玲も何とか言いなさいよ」と促す。

「お姉ちゃんには逆らえないと思うよ」と玲も苦笑しながら、仙道に上がっていくよう勧めた。
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