仙道 前半戦

□conte 20
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12月に入ると、とたんに寒さが増す。だが、体育館内の熱気から逃げるように、仙道は外の階段に腰かけた。
もう薄暗くなってきており、グラウンドやテニスコートにはライトが点いている。中にいると時間の感覚がないが、5時すぎであった。外で部活をしている者は、日が短くなってきていることを顕著に感じることだろう。
その時、不意に名を呼ばれた。

「そっちも休憩? 暗くても、シルエットで仙道ってわかるから便利ね。」

クスクス笑いながら、近づいてきたのは玲。

「ホント、もう暗いんだな。中いるとわかんねー」
「そっかあ。これからの時期は体育館の中って羨ましいよ」
「寒そうだよな、いくら運動するっていっても」

ほてった肌の上を冷たい風が吹き抜けていく。ふと、仙道は玲の手をとった。

「冷てえー」
「そう? そうだね、仙道あったかい」
「反対の手も、ほら」
座っている仙道は ちょうど目の前の玲の手を捕えて、両手で包み込んだ。手のひらから体温を分けるように。冷え切った小さな手は心許ない。

「もしかして、身も心も冷たくなってる?抱きしめてあげよーか」

ニコリとしながら、からかうように言う仙道。玲はまだそんな仙道に慣れない。慌てて手を引っ込めようとするが、仙道はなかなか離さない。

その時、体育館から田岡が出てきた。目が合い、玲はペコッと頭を下げると、田岡は少し驚いたような顔をした。

「お前たちのことは職員室でも有名だが、初めて一緒のところを見たかもしれん……な」

田岡は3年の担当のため、1年生の教室のある西校舎には縁がない。仙道と彼女のことは、もちろん即日耳に入り興味を持っていたが、偶然にして今まで目の当たりにすることはなかった。

「お互い練習で忙しいからですよ。先生、少し減らしませんか?」
「そしたら睡眠に回しちゃうでしょ……」

ボソッとつぶやいた玲に、仙道は何を言うんだと慌てて玲のその口を塞ごうとした。それをスッとよけ、ニヤリとする玲。

「そうだな、そうしたらおまえがずっと寝ていると、他の先生からの苦情が減るな」
田岡は苦笑いをした。
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