仙道 前半戦

□conte 23
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先ほど閉めたばかりの玄関のチャイムが鳴り、あまり考えなしに仙道はそのドアを開けた。

「あれ、どうした?」

驚いた顔の仙道を前に、玲は一瞬の戸惑いの後に中に進み入る。そして、溢れてきた想いに流されるようにその胸に飛び込んだ。何気なく言ったであろう越野の言葉から仙道の気持ちを感じ、それに突き動かされるように戻ってきたが、その戻るという行為が何を意味するのかぐらいわかっている。

しがみつくように背中に回された手。そのわずかな震えに気付き、仙道は優しく言う。
「玲、ビックリしたよ」
髪をそっと撫でると、そのまま腕を伸ばし、静かに玄関の鍵を掛けた。

顎に手をかけ、上向かせてキスをする。そのまま何度も何度も。それに応えるように、玲も仙道に唇を重ねる。やがてたまらなくなった仙道は、キスしたまま玲を抱えてベッドに連れていくと、彼女にまたがるように座った。

頭の両サイドで手首をそっと拘束し、優しく見つめると、玲も自分の意思を示すかのように仙道の目をしっかり見つめ返してきた。その甘美な視線に仙道の胸は高鳴り、愛おしさは増す。

そしてゆっくり上体を倒し顔を近づけていくと、玲はそっと目を閉じた。角度を変えるキスを何度も繰り返す。

「ん…せんどっ……」

苦しくなった玲が唇を開けば、その隙をついて仙道は舌を割り込ませた。熱いくらいのそれが触れ合う。優しく緩やかに、だが徐々に夢中になり抑えがきかない。頭の芯が蕩けそうだ。そんな情熱的なキスを何度も何度も仙道は与え続ける。

「ヤバイ、夢じゃねーよな。舞い上がってどうにかなりそう……」

そしてまた口づけを落とす。やがて仙道の唇は玲の輪郭をたどり、首筋に。そっと舌を這わせてから体を起こし、自分のTシャツに手をかけ脱ぎ捨てた──




玲は思わず視線を落とした。
鍛えられた無駄のない仙道の上半身。改めて見上げると、思っていた以上に逞しい。そこから長く伸びる力強い腕。青い血管が少し浮き出ており、男を感じさせる。この腕に抱かれたいという欲求が玲におこり、そんな自分に驚いた。

ふと左肩の後ろに大きな湿布が張られているのが見えた。
「肩、大丈夫?」
「そんなの忘れてた」と仙道は優しく笑う。そして耳元でそっと囁く。
「そんなことより、夢じゃねーこと確認させて」

淡く色づく鎖骨にキスを落としながら、仙道によってボタンが外され、ゆっくりと開かれた。薄いラベンダー色の下着があらわに。そしておもむろに肩からブラウスを取りさられる。
その動きを素直に受け入れていたが、玲は恥ずかしさのあまり視線をはずした。だが、自分の名を愛おしそうに囁く声に呼び戻され、ためらいがちに顔をあげると、彼の唇が視界に入る。

もっと名前を呼んでほしい。
もっと触れてほしい。

戸惑いながらも手を伸ばし、仙道の頬を優しく包む。そのまま髪に手を滑らせると、そっと自分から仙道に唇を重ねた。触れるだけのキス。だが、玲からのこのキスを契機に、お互い堰を切ったように求め合い、絡み合う。

「あっ……」
「玲……」

なおも仙道は息をするのも許さないかのように、玲の唇を奪い続けた。

「…仙道っ……」
「玲……名前で呼んで」
「……」

しばらく間があって、苦し気な呼吸の間、キスの合間から、玲が吐息とともにその名を口にした。

「あ…あきら……」
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