仙道 前半戦
□conte 27
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IHの数日前
桜木の一言から、翔陽と陵南混合で試合をすることになり、メンバーが慌ててかき集められた。仙道にも連絡が入る。練習は午後からなので、いつものように玲と埠頭に来ていた。
湘北に到着すると、デートの邪魔してスンマセン! と彦一はペコペコ頭を下げて謝ってきた。皆の視線が仙道と玲に集まる。玲のことは殆んどの者が仙道の彼女だと見知っていた。
そこに「おまえ、なんで仙道と……?」と藤真の声。「えっ、健司……」と玲もひどく驚いている。
名前で呼び合うふたりに、周囲は凍り付いたようにシーンとした。おまえ呼ばわりする藤真。何かワケありなんだろうか。しかもこのふたり、隣に並ぶとなんだかしっくりくる。お似合いとも言えそうな雰囲気だ。
翔陽のメンバーも陵南のメンバーも口を開けたまま見つめるだけだし、間にはさまれた彦一はオロオロするばかり。そんな中、仙道が口を切った。
「玲、知ってるのか? 藤真さんのこと」
「えっ?」
なんだなんだ? 修羅場か? と湘北の問題児たちは遠慮なく聞き耳をたてた。面白いことになりそうだと野次馬根性を隠そうともしない。そこに藤真が呆れたように言い放つ。
「そりゃ、イトコだからな」
誰もが驚愕するひと言。仙道も理解できない様子。彼が狼狽えるなんて珍しい。
「やだな、仙道、うちのお母さんが言ってたよね『従兄のけんちゃんも翔陽でバスケしてる』って」
「『けんちゃん』じゃわかんねえよ……」
「オレも『玲の彼氏もバスケ部らしい』とは聞いてたけど、まさか仙道とは……世の中狭いな」
第2Qになると、混合チームもだんだん連携がとれるようになってきた。
「何か、不思議……仙道と健司が一緒にプレイしてるなんて」
「そりゃ、普通に考えても貴重な組み合わせなのに、玲ちゃんにとってはなおさらだろ」
越野も驚きを隠せなかった。まさか従兄だとはなあと。だが母親同士が姉妹だとあって、言われてみると似ているかもしれない。
そして前半終了。玲が混合チームにドリンクを配った。
「はい、健司。私、健司がバスケしてるの初めて見るよ」
「そうだよな、だいたい会うのも正月以来か? お互い部活漬けだもんなーって思ってたら、仙道と恋愛してやがったとは。騙されたぜ」
「相変わらずだね、健司……」
「いじめないでくださいよ、藤真さん」と仙道は苦笑いした。そして、さてこの後は、と藤真を中心に作戦をたてていく。
後半、福田も到着し、さらに強力な布陣となり湘北に襲い掛かる。そのオフェンス力を引き出そうとプレイする藤真に玲は感心した。知らなかった―― 身近な存在であった従兄のバスケ。
コンビネーションを成功させ、ハイタッチをする藤真と仙道。とても即席チームとは思えない。だが、最後の藤真から仙道へのアリウープは、実に見事なパスであったが、桜木にはたかれ、試合は湘北の勝利で終わった。
これから全国に向かう湘北へのはなむけになる試合となった。