仙道 前半戦

□conte 28
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体育館のコンクリートの階段に越野と福田が座っていたので、お疲れと声かけると、2人が必要以上に反応したことに玲は気づいた。

「何、どうかしたの?」
「へ? 何が……? なあ、福田」
「……ああ」

首を傾げつつ歩きだすと、「玲ちゃん、ちょっと待て!」と越野が慌てて呼び止めた。だが玲の方が早かった。

体育館の脇に背の高い男と女の子がいるのが目に入る。それはどう見ても告白シーン。そのまま玲は後ろずさりにバックし、越野たちのところへ戻った。
「気を使わないで早く言ってよ」と苦笑いしながら、ふたりの隣に座った。

「いいのか?」
「って言われても。まさかあそこに割って入れと?」
「仙道の頭に強烈なショットでも打ち込むとかどうだ」
「残念、ボールがない」

まあ、仙道も断ってるだけだからなのだからどうしようもないよなと言いながら、越野は自分の膝に頬杖をついた。

「夏の合宿の時……アイツ、玲に会いてえなってうるさかった」

珍しく福田から口を開いた。口数少ない彼からなんて、なかなか貴重なこと。

「お、そうそう、禁断症状でてたよな。隣に寝てるオレに抱き付いてきて、『玲』とか囁かれたときは蹴り入れたぜ」
「ちょ、ちょっと恥ずかしいから止めてよ」と言いつつ、2人の何とも不器用なフォローが玲はとても嬉しかった。

そんな風にふざけていると「楽しそうだね」と頭上から声が降ってきた。いつもと変わりない笑顔を向けられ、それに玲はちょっとムッとした。仙道に何ら非はないとわかっているのに。

「部室に行きたかったのに、通れなくてね」
「なんで、通ればいいのに」
「バッカ、おまえ、通れるわけねーだろ。オレだって通れねえよ」
越野が助け舟を出してくれる。
「っていうか、邪魔しろよ。玲にヤキモチ妬かれてーな」

そう仙道は言って、玲の頭を撫でた。
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