三井長編

□conte 02
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休み明けに手術の予約を入れて、とりあえず固定して帰ることになった。会計を待つ間、ほとんど誰もいない病院のロビーに桜輔を真ん中に3人で座る。その桜輔がポツリと口を開いた。

「三井さん…すんません……」
「何、謝ってんだ。どーせ言うなら礼にしろ」

それを聞いて紫帆も慌ててお礼を言った。ところで、この男はコーチと言っていたが何者なんだと思いながら。自分がさきほど彼の小さな肯定にホッとしたことなどすっかり忘れていた。

「姉貴もありがと。わりいな、仕事休みの日に」
「社会人? 学生かと思った」
「今日は化粧薄いけど、三井さんと同い年ですよ」
「なに勝手に人の年齢ばらしてんのよ」と紫帆は弟を肘でついた。
しかも化粧薄いって、あんたのために慌てて飛んできたからじゃない!といつものごとく
言い返しそうになるのを、三井がいるので我慢した。

「あの……三井さんは湘北の先生なんですか?」
「いや、オレは休日だけバスケ教えに来てる。監督の先生がだいぶ高齢だからな」

三井さんは6年前に湘北が初めて全国大会に行ったときのメンバーで、あの山王工業に勝ったんだぜ? と桜輔が自慢げに話す。
大学もバスケ部で過ごし、今は普通に会社勤めをしながら土日だけ来てくれるそうだ。

「あ、そうだ。何かあったらここに連絡くれねーか?」

三井が名刺の裏に携帯番号を書いて差し出してきたので、紫帆は両手で受け取った。
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