三井長編
□conte 08
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ゆっくりと門が開かれ、出てきた作業着のこれまた大柄な男は、停めてあった車の荷台に身を乗り出そうとしたところでこちらの視線に気が付いたらしい。驚きでバランスを崩し、肩をトラックの淵に打ちつけていた。
「三っちゃん……?」
「バ、バカやろ、その呼び方やめろって!」
今さらなことを口走り、三井は墓穴を掘った。ごつい男の口から発せられたその言葉の意味を、自ら紫帆に理解させてしまった。明らかに彼女は笑いをこらえている。
「あれ? ふたりはお知り合い?」
「ま、まあな」
そこで桜輔は気づいたようだ。
「あっ! 三井さんの応援団……」
何でそんなことおまえが知ってんだ!? と三井に遮られ、山王戦の映像に残ってると桜輔はマジマジと堀田を見ながらぺこりとお辞儀した。堀田も軽く返すが、そんな話からおいてきぼりをくらっているのは彼自身。
「なんで、三っちゃんがここに?」
「三っ…だからそれ……あー、めんどくせっ、もういい。オレはこいつ送ってきたんだよ。中林、湘北のバスケ部員でさ」
苗字を聞いて、自分が仕事を依頼された家の子だとわかったらしい。
偶然に驚きつつも、もういちど桜輔に小さく頭を下げた。そして、ジャージを着ていてもわかる明らかな膝周りの不自然さに気が付いたようだった。
「で、この徳男は……堀田はオレの同級生でダチなんだよ」
同級生……紫帆は密かに驚いた。申し訳ないけど、そうは見えない。それにこのふたりが友人とは。その心を読んだかのように三井が言った。
「だからおまえとも歳同じだぜ? 今、見えねえって思っただろ?」
「そ、そんなこと……」
「へ? お嬢さんも……」と堀田が解したところで、三井がブッと笑った。
「お嬢さん、ね。まあな、大事なクライアントの家の娘だもんな。ププッ」
「ちょっと! 私はさっき笑うの我慢してあげたのに!」
「ああ、『三っちゃん』ってやつ?」
桜輔も追い打ちをかけるようなことを言うから、三井はチッと舌打ちし、おまえのせーだと堀田を軽く睨んだ。